疾患ガイド

内視鏡治療(内視鏡的切除)の知識

内視鏡治療(内視鏡的切除)の知識
丸岡 大介 先生

亀戸内視鏡・胃腸内科クリニック 院長

丸岡 大介 先生【監修】

目次
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早期の消化管がんなどに対して行われる内視鏡治療(内視鏡的切除)について、手術(外科治療)との違いや主な種類、そして治療後の生活などを解説します。

👉 このパートをまとめると
内視鏡的切除は、口や肛門(こうもん)から挿入したカメラを使い、皮膚を切らずに病変を切除する方法です。手術に比べ体への負担が少ない点が特徴です。

内視鏡的切除と手術の最も大きな違いは、病変へのアプローチ方法にあります。

  • 手術……一般的にはメスを使って皮膚を切り、病変のある臓器を切除
  • 内視鏡的切除……口や肛門などから内視鏡(先端にカメラが付いた細い管)を挿入し、体の内側から病変を切除

このアプローチの違いにより、内視鏡的切除は体の表面に傷が残らず、手術に比べて体への負担(侵襲)(しんしゅう)が少ないとされています。

近年の医療では、体への負担を可能な限り軽減する“低侵襲治療”が重視される傾向にあります。内視鏡的切除は、その代表的な選択肢の1つです。胃や大腸といった臓器を大きく切除するわけではないため、治療後も臓器の機能が良好に保たれます。特に治療後の食事や栄養摂取の面で大きなメリットとなり得るといわれています。また、術後の痛みが少なく早い回復が期待できるため、入院期間の短縮や早期の社会復帰につながる可能性があります。

そのほか、手術に耐えることが難しい(場合によっては手術不能な)、主に90歳以上の高齢者や心機能・腎機能が悪い患者にも比較的安全に行える点も、大変大きなメリットです。

👉 このパートをまとめると
病変の大きさや深さに応じて、最適な治療法が選択されます。小さなポリープではポリペクトミー、平坦な形の場合はEMR、比較的大きな病変はESDなど、主に3つの治療法が使い分けられています。

内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)とは、主にキノコのような茎のある小さなポリープに対して行われる方法です。一般的には、スネアと呼ばれる輪状のワイヤーをポリープの根元にかけ、高周波電流を流して焼き切ります。

近年、高周波電流を流さずに小さなポリープ(主に径1cm未満)を切除する“コールドスネアポリペクトミー”と呼ばれる方法が登場し、多くの場合で選択されるようになってきています。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、平坦な形や、少し盛り上がった形の病変に対して用いられます。一般的には、まず病変の下の層(粘膜下層)に生理食塩水などを注入(局注)して病変を浮き上がらせます。その後、ポリペクトミーと同様にスネアをかけて焼き切る方法です。

なお、EMRにはさまざまな手技が存在し、消化管内腔を水で満たして局注をしない方法などもあるため、具体的な切除方法は主治医に確認しましょう。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)(ESD)は、EMRでは一度に切除しきれないような比較的大きな病変や、がんが疑われる病変の一部に対して行われる、より高度な技術です。EMRと同様に粘膜下層に液体を注入した後、専用の高周波ナイフで病変の周囲の粘膜を切り、粘膜下層から少しずつ剥ぎ取って切除します。

👉 このパートをまとめると
主に、消化管壁の浅い層(粘膜内など)にとどまっている比較的初期の食道がん胃がん大腸がんなどのがんや、良性であっても将来的にがんになり得る腺腫などの病変が内視鏡的切除の対象です。

がんが粘膜の浅い層にとどまっている比較的初期で、かつリンパ節などへの転移の可能性が極めて低いと考えられる病変が、内視鏡的切除適応と判断されます。

治療前には通常の内視鏡検査に加えて画像強調観察や、必要に応じて超音波内視鏡検査なども追加して行い、がんの広がりや深さを慎重に診断します。

治療後には切除した病変を病理学的に、それぞれの臓器に応じて規定された大きさ・深さ・分化度(正常な細胞と比べてどの程度異なっているか)、またミクロのレベルで血管やリンパ管などにがん細胞が入っていないかなどを詳細に診断し、治癒したといえるのか、または外科的切除などの追加治療が必要なのかを判断していきます。

画像強調観察:通常の内視鏡検査で使用される白色光ではなく青緑色の光で観察することで表面構造や血管などを詳細に観察したり、色素を散布して観察することで病変の微細な凹凸を分かりやすくしたりする方法。

大腸ポリープの中でも、放置するとがん化する可能性のある病変が切除対象となります。具体的には腺腫という良性の腫瘍(しゅよう)がそれにあたりますが、5mm以下の微小な病変の一部は年齢や全身状態に応じて経過観察も許容とはされています。このほか、がんに進行する可能性もあるSSL(SSA/P)と呼ばれるポリープなども切除の対象とされています。

👉 このパートをまとめると
内視鏡的切除では、まれに出血や穿孔(せんこう)を生じる可能性があります。また、鎮静薬を使用した場合では呼吸が弱くなる可能性があります。それらに対し、安全性を確保するための取り組みが行われています。

内視鏡的切除に伴う主な合併症として、治療中や治療後に、出血や臓器の壁に穴が開く穿孔がまれに生じる可能性があります。

たとえば大腸がんの場合、ポリペクトミーによる合併症の発生率は出血が1.6%、穿孔が0.05%と報告されています。

出血や穿孔が起きた場合でも、多くは内視鏡を使った追加の処置で対応が可能ですが、ごくまれに血管からアプローチしての止血や、お腹を切る手術が必要になることもあります。術後に持続する血便や強い腹痛などがある場合は、医療スタッフに相談しましょう。

内視鏡的切除に伴う苦痛を和らげる目的で、鎮静薬が使用される場合があります。鎮静薬により、うとうとと眠っているような状態で治療を受けることが可能です。しかし、鎮静薬の使用時には、まれに呼吸が弱くなったり血圧が低下したりする場合があります。

鎮静薬を安全に使用するために、以下のような方法がとられています。

  • 術前の評価……病歴(心肺機能の低下や睡眠時無呼吸、薬剤アレルギーなどの有無)や全身状態を事前に評価
  • モニタリング……治療中~治療後にかけて、血圧や呼吸の状態、血中の酸素濃度などを常に確認
  • 対応……万が一、呼吸が弱くなったり血圧が低下したりした場合、適切に対応できるよう医療スタッフの訓練を実施

👉 このパートをまとめると
内視鏡的切除後の生活や治療費、仕事復帰の目安は、どのような治療を受けたかによって異なります。

入院期間は臓器や治療内容によって異なります。食道や胃の場合にはほとんどの場合で入院が必要で、入院期間は通常4~7日程度です。大腸の場合はポリペクトミーやEMRでは多くが外来や日帰り入院で行われますが、一部の症例やESD例では5~7日程度の入院が必要です。

がん大腸ポリープなどの場合、内視鏡的切除では公的医療保険が適用されます。自己負担額は、年齢や所得に応じて1~3割となります。治療費は治療内容によって変動しますが、日帰りで大腸ポリープを切除する場合、自己負担額(3割負担)の目安は2~3万円程度です。

また、内視鏡切除や入院によって治療費が高額になった場合は、“高額療養費制度”という自己負担額を一定の上限額までに抑える制度を利用できることがあります。

大腸においては、ポリペクトミーやEMRの場合は病変の大きさや形態などにもよりますが、一般的には油や食物繊維などを1~3日程度控える食事制限が行われます。一方で、ESDの場合は徐々に食事の種類や量を上げていき、5~7日で通常食に戻す医療機関が多い形となっています。

社会復帰のタイミングは、体の回復状況や仕事内容、治療方法によって異なります。日帰りで大腸ポリープを切除した後は、デスクワークのような身体的負担の少ない仕事であれば、一般的に帰宅後すぐに復帰することが可能です。一方で、重い物を持つ、お腹に力が入るような活動は、治療後の出血のリスクを避けるため、少なくとも数日間は控える必要があるとされています。

Q.ポリープは全て取らなければいけませんか?

A.いいえ、全てのポリープが切除の対象となるわけではありません。がん化のリスクが極めて低い種類のポリープや、サイズが非常に小さいポリープについては、切除せずに経過を観察する場合もあります。

Q.治療後、がんは再発しませんか?

A.前述のように、切除後は病変が取り切れていることはもちろん、切除した病変を病理学的に評価し、それぞれの臓器に応じて規定された要素をクリアしている場合において、いわゆる“治った”(再発しない)状態と判断することができます。その場合は切除部位の再発の可能性よりも、“病変があった臓器にがんができやすい体質である”とは判断されるため、別の部位にがんが新たにできてこないかも含めて、慎重に内視鏡検査を行いフォローアップしていきます。ほとんどの場合はこのパターンです。

対して規定の要素をクリアしていない場合は、その要素に応じて局所、もしくは遠隔転移再発**の可能性が一定以上存在します。そのため、年齢や全身状態に大きな問題がない場合は、手術などの追加治療を行う形となります。

*局所再発:最初にがんが発生した部位と同じ,あるいはその近くに再びがんが生じること。

**遠隔転移再発:最初にがんが発生した器官から離れた別の器官にもがんが生じること。

この記事では、内視鏡的切除の基本的な知識から、治療後の生活までを解説しました。内視鏡的切除は、手術に比べて体への負担が少ないといわれています。しかし、まれに出血や穿孔などの合併症が生じる可能性もあります。また、内視鏡的切除の適応になるかどうかは慎重な診断が必要とされ、実際の治療選択肢については主治医に確認しましょう。

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