
肝臓がん根治の方法として、肝切除や肝移植などの手術(外科治療)があります。しかしその一方で肝切除などを行っても、再発率が高いことも知られています。肝臓がんの手術の種類や再発率、生存率について、戸畑共立病院 外科顧問、消化器外科部長の奥田康司先生に解説していただきました。
ラジオ波焼灼術とは、腫瘍を電極針で穿刺し、ラジオの周波数に近い高周波の電流を腫瘍のなかに流すことで発生する熱によってがんを死滅させる方法です。腫瘍径が2cm以下の早期の肝臓がんでは標準的治療となっています。また、治療ガイドラインでは3cm以下、3個以内のものであれば適応があるとされています。電極針の穿刺は一般に超音波装置でガイドしながら開腹せずに行われますが(経皮的焼灼術)、部位的に経皮的穿刺ができない場合、あるいは難しい場合は開腹下に行われます。
肝臓がんの手術として最も多いのが、がんの発生した部位の肝臓を切除する肝切除です。肝切除はある程度大きな病変や、多発していても一定の個数以下であれば切除できます。
肝硬変により肝機能が低下している肝臓がんに対しては、肝移植が行われます。脳死臓器提供の少ない日本においては、ほとんどが身内の健康な方から肝臓の一部を提供していただく生体肝移植となりますが、ドナーの適用条件の問題などから、実際に肝移植を受けられるのは肝移植希望者の25%程度です。
肝移植は肝切除と違い術後に免疫抑制剤を服用するため、がん免疫も低下させます。ですから再発のリスクが高いために比較的進行度の小さいがんの場合に行われます。腫瘍径(腫瘍の大きさ)が単発の場合5cm以内、多発の場合は3cm以内かつ腫瘍の個数が3個以内(ミラノ基準)で、かつ肝硬変を合併し肝機能が低下していることが肝移植の標準的適応となります。
ミラノ基準内であれば他の肝臓がん治療と比べて圧倒的に治療成績がよく、ミラノ基準外の病変であってもダウンステージングなどで小さくできれば非常に治療効果の高い治療法です。
手術以外での肝臓がんの治療は、化学療法が主になります。肝動脈を塞いでがん細胞を死滅させる肝動脈塞栓術や、肝動脈に抗がん剤を少量ずつ注入してがんの増殖や転移を抑える肝動注化学療法が、肝臓がんの化学療法でよく用いられる治療法です。
他に、ソラフェニブトシル酸塩という肝臓がんに効果のある分子標的薬(抗がん剤の一種)を使用しての治療も挙げられます。これらの化学療法を用いてがんを手術可能な大きさまで縮小させるダウンステージングという方法もあります。
高度進行肝臓がんのダウンステージングや肝動脈塞栓術、肝動注化学療法、ソラフェニブトシル酸塩については記事1『肝臓がんが進行したら?肝臓がんのダウンステージング』をご覧ください。
肝臓がんには2種類あります。肝細胞そのものに発生した原発性肝臓がんと、大腸など肝臓以外の臓器で発生したがん細胞が肝臓に転移する転移性肝臓がんです。
原発性肝臓がんは再発率が高いことでも知られています。肝切除後の再発率は1年後で23%、5年後で74%と他のがんに比べても高いです。特にいったんがんを完治させても同じ肝臓に新たに発生するがんを多中心性発がんといい、肝臓がんが再発した患者さんの少なくとも半数はこれにあたると考えられています。
多中心性発がんは転移と異なり、再度別個にがんが発生したという状況のため、早期に発見・治療できれば問題ありません。そのため肝臓がんは再発しても再発後の生存率が高いのです。ですから、再発したからといって悲観的にならずに早期に適切な治療を受けることが大切です。

久留米大学病院で手術を受けた肝臓がん患者さんのステージごとの生存率を示します。()内は日本肝癌研究会の同時期の成績です。
ステージⅠの5年後生存率は88%、ステージⅡは69%、ステージⅢは61%、ステージⅣAは35%と、いずれも日本肝癌研究会の成績を上回っています。特に最近ステージIII、IVの成績が良くなってきており、外科治療、化学療法、局所療法、そしてダウンステージングなどさまざまな治療法を集学的に行った結果が徐々に出てきているといえるでしょう。
先に述べたように、肝臓がんは再発率が高いがんです。しかし早期に発見・治療していけば再発後の長期生存も期待できます。また、ステージⅢ、ステージⅣの高度進行がんではひとつの治療法にこだわらずに、他科とも連携しさまざまな治療法を進めていく集学的治療が非常に重要です。早期の肝臓がんであればラジオ波焼灼術や肝切除、肝移植など、肝切除ができない高度進行がんでは肝動注化学療法や肝動脈塞栓術などを行いながら、患者さんの肝臓がんの経過をみて適切な集学的治療を行っていくことが医療者には求められています。
患者さんも肝臓がんの治療を考えたときは、集学的治療ができるか、他科との連携がじゅうぶんにできているか、さまざまな治療法を提案してもらえるかなどをポイントに、肝臓がんの治療を受ける病院を探すと満足いく治療ができる可能性が高まるでしょう。
戸畑共立病院 外科顧問、消化器外科部長
戸畑共立病院 外科顧問、消化器外科部長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医
久留米大学肝胆膵部門 教授を退官後、戸畑共立病院 外科顧問ならびに消化器外科部長として勤務。全国平均を大きく上回る肝臓がんの治療成績を残し、日本の肝臓がん治療を支えている。「世界に冠たる日本の肝臓がん治療に携わっていることを光栄に感じています。25年以上進行肝臓がんに対する治療を行ってきましたが、最近の治療成績の向上には目を見張るものがあります。進行がんであっても諦めないことが大事。」
奥田 康司 先生の所属医療機関
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
関連の医療相談が10件あります
フルオロメトロン点眼液は何日間使えばいいのか
左目の痒み、目ヤニ、涙が出る、目がジンジンする、腫れてる感じが治らないので眼科に行ったところ、上瞼の裏にぶつぶつがありアレルギーかなという診断で、エピナスチンLX点眼液とフルオロメトロン点眼液をもらいました。 目薬からアレルギー性結膜炎の診断なのかなと思っています。 先生からの指示(処方箋に書いてたこと)は1日2回朝夕、1回1、2滴、両目にさすでした。 いつまでとか何日間とか書いてなくて薬剤師さんにも言われなかったのでいつまで使えばいいのかわかりません。 エピナスチンはアレルギー用なので痒みがなくなればいつやめてもいいというのはわかるのですが、フルオロメトロンはステロイドなので勝手にやめない方がいいと思うのですが、指示がなく次の再診予定もないためどうしたらいいかわかりません。 指示がない場合には通常何日くらい使うものなのでしょうか? また、今回行った眼科はかかりつけがお盆休みで行けないため急遽行った眼科です。 もししばらくしてもよくならず再受診が必要となった時はかかりつけに行こうと思うのですが、それで大丈夫でしょうか?
パニック障害?甲状腺?常に息苦しさが吸えない
パニック障害と診断されていますが、現在、予期不安が強く、「また息苦しくなるのではないか」「倒れてしまうのではないか」という不安がよくあります。 症状としては、息苦しさ・呼吸が浅く感じる・喉の詰まりや異物感・あくびが多い・発汗しやすい・時々手が細かく震える・下痢気味などがあります。症状は急に強くなることがあり、呼吸や身体のことを意識すると悪化する感じがあります。一方、仕事など他のことに集中していると多少気にならなくなります。 喉の違和感は比較的常にありますが、食事や水分は普通に飲み込めています。咳、喘鳴(ゼーゼー)、声のかすれはありません。 安静時の頻脈はなく、現在は心拍60〜70回/分程度です。以前の心電図でも異常は指摘されていません。2026年4月の健診ではHb 15.5g/dLで、貧血はありませんでした。 一方で、甲状腺機能(TSH・FT4など)は検査したことがないと思います。汗をかきやすいことや手の震え、首の前側が少し腫れているように感じることもあるため、甲状腺機能について一度検査した方がよいでしょうか。 また、喉の違和感について、咽喉頭異常感症(いわゆるヒステリー球/globus sensation)の可能性は考えられますか。 パニック障害の薬を処方されていますが、副作用への不安が強く、まだ服用できていません。SSRIを開始することに抵抗があるため、まず半夏厚朴湯などの漢方薬を試す選択肢についても先生のご意見を伺いたいです。 ①現在の症状はパニック障害・予期不安によるものとして矛盾しないでしょうか。 ②甲状腺機能(TSH・FT4等)の検査は必要でしょうか。 ③喉の違和感について耳鼻科等での検査は必要でしょうか。 ④SSRIへの不安が強い場合、漢方薬から治療を始める選択肢はありますか。 よろしくお願いいたします。
扁桃炎の手術について、した場合としない場合のメリットデメリットについて
ここ1、2年、疲れた時?リンパが腫れて痛みがあるがそれ以外は症状はない。痛み止めを飲めばすぐ治るけど、最近半年から3ヶ月ぐらいで頻繁に腫れる。最近行った病院で扁桃炎と言われ手術を考えたら?とも言われたが、した方がいいのか?もしした時のメリットデメリットがわからなくてどうしたらいいのか悩んでます。手術した方がいいと思いますか?また、手術した場合しない場合のメリットデメリットを教えて下さい。
腕の内側の血管が一部浮き出てきた
2週間以内くらい前からだと思うのですが、右側腕の内側(手首と肘の間の真ん中あたり)横向きに半円を描く感じで長さ2センチくらい太い血管が浮き出てきました。痛みはありません。腕にそって太い血管もうっすら見えますが、横向き2センチほど、そこだけが浮きでてきて目立ちます。 考えられる可能性と受診の目安を教えてほしいです。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「肝がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。