食道がんの治療法にはいくつかの種類がありますが、その選択はがんの進行度をはじめ様々な要素を考慮して決定されます。食道がんに対する最新のロボット手術を世界で初めて成功させた東京大学胃・食道外科教授の瀬戸泰之先生に、食道がんの治療について詳しくご説明いただきました。
上の表にも示した通り、食道がんの治療法は「がんの深達度」「リンパ節転移」「遠隔転移」の3つの要因から進行度が診断されます。さらに病巣の特性、全身状態の評価が加わり、ステージングがなされます。その結果によって治療法(主に手術、内視鏡治療、放射線治療、化学療法)が決定されるのです。また、進行したがんでは、それぞれの治療法を組み合わせた「集学的治療法」が行われます。
治療法決定の具体的なアルゴリズム(手順)は以下のようなものになります。これは一例であり、施設によって治療方針が異なる場合があります。原則はありますが、細かな内容については施設に委ねられています。
簡単に述べるならば、食道がんの到達した深さが浅くてリンパ節にも転移をしていない場合は、「内視鏡的切除術」が一般的となります。よりがんの到達した深さが増すと、外科的治療の適応となります。また、外科的切除の前にがんを小さくすることを目的として、術前に化学療法や放射線療法を行うこともあります。内視鏡的切除や外科的治療で切除しきれない場合には、化学療法や放射線療法のみを行う場合もあります。
ここでそれぞれの治療法についてみていきましょう。
代表的な治療です。食道がんの治療のうち、55%において外科的治療が施行されています。
食道がんの外科的手術は極めて大きな手術となります。なぜなら、食道は背中側の臓器であり、食道周囲には、心臓・肺・気管・大動脈など多くの重要な臓器があるため、食道まで簡単に到達することができないからです。
従来の手術法では、がんの部分だけ切り取って繋げるという単純な手術にはなりません。食道は張っている状態となり、再建がとても難しくなります。また、胸部に施術するだけでなく腹部も施術する必要があるため、大掛かりな手術になります。
内視鏡治療は食道がん治療のうち、15%において施行されています。内視鏡を用い、がんを食道の内側から削りとります。原則的にはステージ0の人のみへの適応となります。
がんに放射線を当て、がん細胞を死滅させる治療です。
放射線の主な副作用としては、嘔気(吐き気)、全身倦怠感、皮膚の変調などがあります。
いわゆる抗がん剤治療です。単剤(一種類の抗がん剤のみを用いる)の場合もありますが、異なる特徴を持った2剤を併用する2剤併用療法が一般的です。また、最近では3剤併用の場合も増えてきました。
保険診療「内」と保険診療「外」の話に分けてお話しします。
腹腔鏡手術は低侵襲(体への負担が少ない)の手術として従来から知られていますが、保険診療内の方法のなかでは今も最新治療であるといえます。ただ留意すべき点としては、2012年の全国集計で、腹腔鏡手術は本来低侵襲とされているのにもかかわらず、術後の合併症頻度が高くなっていることが明らかになったという事実があります。
かつては2剤併用のケースが大半でしたが、徐々に3剤併用がスタンダードになりつつあります。
東大病院では年間40例以上が行われています。
免疫療法は先進医療にもなっていない(「先進医療」にも認められていないほど最新の)治療法ですが、将来的には画期的な治療法になる可能性があります。未知な部分もありますが、この治療法が有効な患者さんがいるという考えのもと、東大病院では臨床試験を行っている段階です。
国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長
日本消化器内視鏡学会 会員日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本外科学会 外科専門医・指導医日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本内視鏡外科学会 会員日本胃癌学会 会員
東京大学医学部附属病院長の医師としてのキャリアは縁から生まれた
胃がんや食道がんを中心とした上部消化管の領域の専門。研修医時代の友人の薦めで上部消化管を専門にすることを決意した。それがのちにさまざまな縁となり、上部消化管を専門にする医師としてのキャリアが積まれることになる。今の自分を作り出した縁を大切にしたいという思いから、若手の医師との縁も大切にしている。
瀬戸 泰之 先生の所属医療機関
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