膵臓がんは消化器のがんの中で、最も予後(病気や治療などの経過についての見通し)不良ながんです。年間に約3万人が罹患し、ほぼ同じ数の人が膵臓がんで死亡しています。根治を目指すには手術しかないものの、切除可能な膵臓がんは全体の約20~30%です。
膵臓がんは、診断された時点ですでに進行していることが多く、早期膵臓がんを発見することは、医学が進んだ現代においても最大の課題です。膵臓がんの早期発見に向けての取り組みについて福岡山王病院の内科部長(当時)の舩越顕博先生にお話を伺いました。
膵臓がんは、全ての悪性腫瘍の約2~3%を占めています。近年、膵臓がんは増加傾向にあり、日本における発症者数と死亡者数は、ほぼ同じで年間約3万人と推定されています。
膵臓がんは、医学が進歩した現在においても未だ早期発見が困難で、診断がついたときには局所進行(がんが最初にできた場所で増えていること)や遠隔転移(がん細胞が最初に発生した場所から別の臓器に移動してふえていること)を起こしていることがほとんどです。膵臓がんで完治(病気を完全に治すこと)を目指せるのは手術のみですが、診断時点で切除可能なのは全体の20~30%程度です。
しかし、早期発見されて手術をしても、その後の5年生存率(5年間生存している確率)は約10~20%と、予後不良な悪性腫瘍の代表です。予後を改善するためには、早期発見しかありませんが、膵臓がんの早期発見は、現代においても大きな課題となっています。
膵臓がんを早い時点で発見することを困難としている背景にはいくつかありますが、膵臓がからだの奥にあり、周りを胃や十二指腸、肝臓や大腸・小腸などに囲まれているため、がんをみつけにくいということもひとつの要因といえるでしょう。
人間ドックなどでは超音波で消化器をまんべんなく調べるわけですが、膵臓は今お話したようにからだの深部にあるため、じっくりと時間をかけ、膵臓にターゲットをしぼりながら検査しなければ、なかなかみつけにくいのです。
加えて、膵臓がんに罹る年齢も関係していると考えられます。人間ドックは比較的若い人が会社の健診などで受けていることが少なくありません。ですが、膵臓がんに罹る人は高齢の方が多く、罹患者の平均年齢は、以前は65~66歳程度だったものが、いまは約70歳と高齢化が進んでいます。この年代の方たちは、すでに何か持病を持っていることが多いため、人間ドックという形での検査を受けていないことがほとんどなのだと思います。
膵臓がんの早期発見のためには、リスク(危険)のある方の積極的な検診が必要となります。
膵臓がんのリスクファクターとしては、
などがあげられます。
膵臓がんの原因ははっきりとはわかっていませんが、上記のリスクファクターに加えて、高齢であるとか、膵臓に囊胞(ふくろ)がある方などががんになりやすいことがわかっています。また、タバコやお酒もリスクとなりますが、アルコール単独よりもタバコと一緒にとることで相乗効果となって膵臓がんになりやすくなるという報告もあります。
その他のリスクとしては、糖尿病の経過観察中にコントロールが悪くなったとか、高齢になって、だいたい50歳以上と考えてもらうといいと思いますが、糖尿病を発症したという方は要注意です。これらのリスクファクターを持つ方たちは、自らすすんで膵臓を調べてもらうよう医師に伝えなければ、早期の膵臓がんを発見することはなかなか難しいのだと思います。
膵臓がんの早期発見は未だに大きな課題なのですが、医学の進歩で診断技術は大きく向上しました。特に画層診断、MRIやCTは膵臓がんの診断に大きく貢献しています。そのひとつが膵臓がんと診断されてからのステージングがより正確にできるようになったということです。リンパ節の転移や遠隔転移の有無などがわかるようになりましたが、早期膵臓がんの発見にはなかなか結びついていないのが現状です。
医療法人 愛風会 さく病院 内科
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