慶応義塾大学が立ち上げた「領域横断的内視鏡手術エキスパート育成プログラム」では、さまざまな最先端技術による術前画像シミュレーションがカリキュラムに組み込まれています。肝胆膵領域におけるこれからの腹腔鏡手術に不可欠とされる3Dシミュレーションの可能性について、慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器) 専任講師の板野理先生にお話をうかがいました。
肝臓解析画像
富士フイルム株式会社のSYNAPSE VINCENT(シナプス・ヴィンセント)は画像解析ソフトでは国内でもっともシェアが高いものです。CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)の画像を取り込んで、脈管などの位置を3Dで構築します。血管の枝ぶりなどから、どの枝がどの領域に栄養分を供給しているか、ここの切除をすると全体の何%の切除になるか、といったことを検討します。さらに、この腫瘍の周囲にはどういう脈管が通っていて、切除するとどの血管が出てくる、といった流れをシミュレーションすることができます。
今後はこういった3D画像解析ソフトによる術前シミュレーションが必須になってくると思います。まだコストの問題などですべての施設に入っているわけではありませんが、特に肝臓の手術では、解剖の構築をして術前にしっかりと把握した上で、どういう切除が可能なのかを考えることが大切です。今後の肝臓外科医には必須の技術・知識のひとつであると考えます。
私たちも以前はCTなどの二次元画像から、頭のなかで3D構築してシミュレーションをしていたわけですが、その場合には開腹手術で肝臓を直接見た状態の3Dをイメージします。ところが、3D構築した画像が実際に目の前にあると、それをあらゆる角度から見ることができます。それはさすがに今まで経験したこともなければ、考えたこともなかったものです。実は腹腔鏡の手術にはそれに近いところがあります。開腹手術では人の視線も手が入らない角度からの手術が実際に可能だからです。そういう視野があることで、今までの開腹手術では考えなかったような切除の仕方を、実際に私たちは行なっています。学会などでも発表していますが、それは今まで開腹手術では考えなかったやり方だと思います。
逆に、腹腔鏡手術には先ほど述べたような、ディスオリエンテーション(見当識障害)に陥りやすいといったデメリットもあります。そこをどう補って、安全性と根治性を両立させた手術を行えるかということを考えると、術前にイメージやプランをしっかりと頭に入れて手術に臨むことが大切になってきます。
現在、それがある程度のところまではできていると思いますが、3D画像解析によるシミュレーションの分野でトピックスになっているのは、術中にいかに直接反映させるか、今切除しているところがどうなっているかを画像にもリンクさせるという技術です。現在でも術中はモニター画面を見ながら行っているのですが、肝臓は大きな臓器ですので、持ち上げたり動かしたりすると変形して脈管などの位置関係が変わってきます。これをいかに術中に反映させるかということがポイントになっています。プロジェクション・マッピングや、術前に作成した3D画像を実際の肝臓の画像に重ね合わせるなど、さまざまな方法が試みられていますが、塑型性(そけいせい・形が変わること)を追従させることが難しく、課題となっています。
このような技術は、たとえ将来的に各施設の設備の関係で使っていくことが難しいとしても、一度体験しておくことで3D構築する頭の訓練がある程度できるようになるので、CT画像を見たときの見え方がまったく違ってきます。
国際医療福祉大学 教授
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医・学会幹事日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(消化器・一般外科領域)日本肝臓学会 肝臓専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本移植学会 移植認定医日本消化器内視鏡学会 会員日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本大腸肛門病学会 会員日本消化器病学会 会員日本胆道学会 評議員・認定指導医日本腹部救急医学会 会員
慶應義塾大学医学部卒業後、永寿総合病院外科 部長 内視鏡手術センター長、慶應義塾大学病院一般・消化器外科 専任講師を経て、2017年4月からは成田に開学する国際医療福祉大学医学部 消化器外科の主任教授を務める。應義塾大学病院では肝胆膵・移植グループのチーフとして診療に携わるとともに、同大学医学部内視鏡手術トレーニングセンターのディレクターとして、内視鏡手術のエキスパート育成に尽力してきた。今後は同病院の特任准教授として内視鏡手術トレーニングのプログラムに関わりつつ、国際医療福祉大学の特色を生かし同トレーニングプログラムの海外展開も視野にいれている。
板野 理 先生の所属医療機関
関連の医療相談が10件あります
虚血性腸炎発症時の対応について
家族(母)の虚血性腸炎についてのご相談です。 3年ほど前に初めて虚血性腸炎を発症してから、度々繰り返しており本年に入ってからは1月と7月に救急搬送しどちらも10日程度入院しました。 3月には大腸カメラをしており、ポリープはとったもののそれ以外の問題はありませんでした。 これまでの傾向として体調を崩しかけるタイミングで虚血性腸炎を発症しやすいようで、本日少し体調悪そうにしていたところ夜に軽度ですが発症しました。本人は救急車を呼ぶほどではないといっており、事前に発症に備えて頓服として処方されたブスコパン10mgを1錠と痛み止めのカロナール200を2錠を服用して様子をみており、明日かかりつけのクリニックに行くつもりです。 このように発症を繰り返している状態なのですが、毎度救急車を呼ぶべきか、救急外来に連れていくべきか非常に悩ましいです。 ひとまず様子見とする状態、救急にかかるべき状態、大まかで結構ですので判断基準をご参考にお示しいただけますと幸いです。 また、主治医からは「うまく病気と付き合っていきましょう」というお話で定期に診察は受けているのですが、繰り返していることに不安もあるところ(主治医を信頼していないわけではないですが)セカンドオピニオンを受診したほうがいいのか、加えて関連して疑うべき病気があるかコメントいただけますと幸いです。
肝門部胆管がんステージ4の寛解に向けた今後の治療方法について
2024年4月の血液検査でガンマーGTが350を超えていて、ALPも250くらい、主治医からは肝臓でしょう、飲みすぎ等の指摘受けましたが、念のために5月上旬に再度検査受けて、連絡なかったので安心していたら腹部膨張感を感じたのが5月中旬、尿がすこしずつ黄色になったのが5月25日くらい、5月31日黄疸症状がありCT検査より胆管がんの疑いありと診断され、大分別府(自宅のある)の大学病院で再検査、6月3日より入院検査、胆管がんステージ4の確定診断、それからステント ERCPの治療、膵炎や薬物アレルギー、胆管炎をおこしながらも、6月17日より イミフィンジ(免疫阻害チェックポイント剤)とランダ、ジェムザールの抗がん剤の治療開始、当初は副作用、脱毛、口内炎、便秘等あったがクールがすすむにつれて改善、白血球(好中球)減少はあるものの、6クールまで進捗している、8月22日の造影CTで当初3センチほどの腫瘍は2.5センチ、10月18日の造影CTでは更に腫瘍が小さくなり2センチ、リンパ転移も縮小、播種なしの状態、身体もすごく調子が良い状態です、8クールまでは今のままの治療で、そこからはイミフィンジだけで経過観察していくとの事です、根治、寛解に向けて他の治療方法はないでしょうか、例えば重粒子や陽子線等 部分寛解まできているので完全寛解を目指していきたいと思います
筋肉が痙攣する
2ヶ月ほど前から はじめはふくらはぎ辺りのだるさ、筋肉がピクピク動くのが気になることから始まりました。痺れや痛みはありません。 この症状が出る前に風邪を引きました。 医師から抗生物質などの薬を処方され、風邪の症状は治ったのですが、そのあたりからこのような症状が出てきた気がします。 それから2ヶ月の間、 症状が和らいだ時もありましたが、いまだに寝る時や座ったままの体勢のときに症状が出ます。ほぼ毎日です。 1ヶ月ほど前からは眼瞼痙攣や 二の腕などの筋肉もピクピクと動く感覚が出始めており、全身に広がってきているような気がします。 神経内科、脳外科、内科を受診し、 血液検査やMRI検査をしました。 血液検査は異常なしでした。 MRI検査で、下垂体に腫瘍があるかもしれないと診断されましたが、担当医師曰く、上記の症状とは関係ないと言われました。 立ち上がれなかったり、動かしにくいという事はないのですが、2ヶ月もの間ほぼ毎日のように症状が出ているので気になって仕事や家事にも集中できず困っています。 考えられる病気などありますか?
足首付近のむくみ、腫れ
以前から、足首のところがおおきくふくれていて、むくんだようになっています。(外見的には、木の幹のような感じの太さです)そして、ここ数日、腫れたような感じにもなっている(痛みは特にないようです)ので、病院を受診させたいと考えています。病院は何科を受診すれば良いでしょうか?また、考えられる病気は何でしょうか?よろしくお願いします。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「肝がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします