食道は胃とのどをつないでいる管です。食道の極めて近い位置には、肺や心臓というとても大事な臓器があります。さらには気管の後ろ、背中の近くというかなり深い部分にあるのです。そのために、食道がんの手術は非常に難しい手術であり、術後の合併症も多く起きてしまっていました。
そのようななかで、東京大学胃食道外科教授の瀬戸泰之先生は患者さんの負担を少しでも軽くできるような食道がんの手術をするために、どうすべきかを常に考え続けてこられました。患者さんのために尽力し続けてきた瀬戸先生が世界で初めて開発された、ダビンチ®による食道がんの最新治療について4回にわたって連載します。第4回では第3回に引き続き、ダビンチ®により食道がんの手術がどう変わったのかという点をお話し頂くとともに、これからの食道がん治療の展望についてもお話頂きました。
従来の手術では20~30%の頻度で発生していた手術後の肺炎は、ダビンチ®による手術ではまだ一度も発生していません。さらに、術後の呼吸機能も、従来の手術方法と比較しても維持されています。
ロボット手術はまだ始まったばかりの手術であり、長期的な治療成績はまだ出ていませんが、この調子でいけば従来の手術と変わらない成績が期待されます。
これにはきちんとした根拠があります。
従来の開胸手術と比較して、ロボット手術ではリンパ節をとることが重要になってきます。両者でとれるリンパ節の個数を比較してみると、同じ個数だけとれているのが分かります。こうなると、基本的に両者はほぼ同等の手術になっているのではないかと考えられます。
医者は科学者でもあります。医学の進歩に貢献しなくてはなりません。この点については、きちんと論文として報告しています。
現時点では、ダビンチ®による我々のような術式は世界でたったひとつの施設でしか行われていません。それが東大病院です。保険適用にもなっていないため、自由診療です。
そもそもダビンチ®がない施設では手術をすることができません。そのため、まだこれについて語るのは時期尚早かと思います。しかし、何度も繰り返しますが、食道がんは非常に規模が大きくて困難な手術です。「開胸せずに治療をしたい」「少しでも患者さんの負担をなくしてあげたい」という医師たちはたくさんいます。そのような意識を多くの医師が持っているので、少しずつこの手術方法は広まっていくのではないでしょうか。そして、それと同時に、この手術方法がさらに発展していくことも期待されます。
ここまで、ロボット手術について語ってきました。ダビンチ®による手術は確かに患者さんの負担を減らすことが期待できます。しかし、それよりも良いのは切らなくて済む内視鏡治療です。放射線療法や抗がん剤による化学療法も発展していくでしょう。
さて、ここまで治療技術の話ばかりをしてきました。しかし、私は最終的には診断技術の進歩こそが、今後もっとも食道がんの治療を変えていくのではないかと考えています。たとえば、「食道のどこまでがんが広がっているのか」「転移がどこまであるか」「どこのリンパ節まで広がっているか」などが正確に分かればどうなるでしょうか。それに合わせて、その部分だけを取ればいいことになります。
現在の診断技術ではまだ、食道がんがどこのリンパ節に転移しているのかまでは正確には分かりません。ですから診断技術が進歩していくことこそが、治療による患者さんの負担を最小限にし、治療の効果を最大限にしていけるのではないかと考えます。
国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長
日本消化器内視鏡学会 会員日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本外科学会 外科専門医・指導医日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本内視鏡外科学会 会員日本胃癌学会 会員
東京大学医学部附属病院長の医師としてのキャリアは縁から生まれた
胃がんや食道がんを中心とした上部消化管の領域の専門。研修医時代の友人の薦めで上部消化管を専門にすることを決意した。それがのちにさまざまな縁となり、上部消化管を専門にする医師としてのキャリアが積まれることになる。今の自分を作り出した縁を大切にしたいという思いから、若手の医師との縁も大切にしている。
瀬戸 泰之 先生の所属医療機関
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食道腺癌の内視鏡手術を終えました。術後は順調なのですが、定期的に内視鏡検査をして経過観察をした方がいいと言われました。再発の心配があると言う事なのでしょうか?どれくらい経過観察で通院しないといけないのかを主治医に聞きたいのですが、なかなか聞き出せずにいます。基本的には癌の経過観察はどのくらいの期間、通勤すればいいのか、お時間あれば教えて頂きたいです。
食道癌で術後1カ月半
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みぞおちあたりがしみる
2ヶ月前ぐらいなら、たまに飲み物を飲むとみぞおち辺りがしみたりします。もともと逆流性食道炎があるのですが、日によって熱いものや冷たいものがしみたりしみなかったりよくわかりません。食べ物がつまるようなことはありません。食欲もあります。夜間に胸焼けをすることがたまにあります。食道がんなんではないかと心配ではあります。胃カメラのもうかとは思ってます。
食道がんが心配です。
三週間前に昼頃急に飲み込むと右側肩甲骨部分と右側右側胸が痛くなり病院に行ったら筋肉痛と言われました。飲み込むと筋肉を使うから飲み込むと痛くなると言われ筋肉注射と飲み薬で楽になりましたがまだじわじわと痛いです。 以前程痛くはないですが、肉やご飯を飲み込むと痛かったり痛くなかったり胸焼けとかもありません。つっかえる感じもあったりなかったり、多分実際は詰まってないと思います。空気を沢山飲み込んでいるのか詰まった感覚がある時はゲップをすると楽になります。風邪薬のカプセルとかは詰まった感覚が全くありません。ゲップを、無理に出そうと力を力が入ったり胃の部分が押し出そうとした時に肩甲骨辺りが痛くなります。飲み込む時も意識してご飯を大きく飲み込んでも痛くなかったりとずっと意識してしまい、痛いかも痛くないって気になってしまいます。一番心配なのは食道がんですが可能性はありますか?宜しくお願い致します。 因みに禁煙してから25年、アルコールは、20年以上飲んでません。
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