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インタビュー

食道がんの最新治療、日本が誇る世界で初めての手術(4)―これからの食道がん治療

食道がんの最新治療、日本が誇る世界で初めての手術(4)―これからの食道がん治療
瀬戸 泰之 先生

国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長

瀬戸 泰之 先生

この記事の最終更新は2015年08月12日です。

食道は胃とのどをつないでいる管です。食道の極めて近い位置には、肺や心臓というとても大事な臓器があります。さらには気管の後ろ、背中の近くというかなり深い部分にあるのです。そのために、食道がんの手術は非常に難しい手術であり、術後の合併症も多く起きてしまっていました。

そのようななかで、東京大学胃食道外科教授の瀬戸泰之先生は患者さんの負担を少しでも軽くできるような食道がんの手術をするために、どうすべきかを常に考え続けてこられました。患者さんのために尽力し続けてきた瀬戸先生が世界で初めて開発された、ダビンチ®による食道がんの最新治療について4回にわたって連載します。第4回では第3回に引き続き、ダビンチ®により食道がんの手術がどう変わったのかという点をお話し頂くとともに、これからの食道がん治療の展望についてもお話頂きました。

従来の手術では20~30%の頻度で発生していた手術後の肺炎は、ダビンチ®による手術ではまだ一度も発生していません。さらに、術後の呼吸機能も、従来の手術方法と比較しても維持されています。
ロボット手術はまだ始まったばかりの手術であり、長期的な治療成績はまだ出ていませんが、この調子でいけば従来の手術と変わらない成績が期待されます。

これにはきちんとした根拠があります。
従来の開胸手術と比較して、ロボット手術ではリンパ節をとることが重要になってきます。両者でとれるリンパ節の個数を比較してみると、同じ個数だけとれているのが分かります。こうなると、基本的に両者はほぼ同等の手術になっているのではないかと考えられます。
医者は科学者でもあります。医学の進歩に貢献しなくてはなりません。この点については、きちんと論文として報告しています。

現時点では、ダビンチ®による我々のような術式は世界でたったひとつの施設でしか行われていません。それが東大病院です。保険適用にもなっていないため、自由診療です。

そもそもダビンチ®がない施設では手術をすることができません。そのため、まだこれについて語るのは時期尚早かと思います。しかし、何度も繰り返しますが、食道がんは非常に規模が大きくて困難な手術です。「開胸せずに治療をしたい」「少しでも患者さんの負担をなくしてあげたい」という医師たちはたくさんいます。そのような意識を多くの医師が持っているので、少しずつこの手術方法は広まっていくのではないでしょうか。そして、それと同時に、この手術方法がさらに発展していくことも期待されます。

ここまで、ロボット手術について語ってきました。ダビンチ®による手術は確かに患者さんの負担を減らすことが期待できます。しかし、それよりも良いのは切らなくて済む内視鏡治療です。放射線療法や抗がん剤による化学療法も発展していくでしょう。

さて、ここまで治療技術の話ばかりをしてきました。しかし、私は最終的には診断技術の進歩こそが、今後もっとも食道がんの治療を変えていくのではないかと考えています。たとえば、「食道のどこまでがんが広がっているのか」「転移がどこまであるか」「どこのリンパ節まで広がっているか」などが正確に分かればどうなるでしょうか。それに合わせて、その部分だけを取ればいいことになります。

現在の診断技術ではまだ、食道がんがどこのリンパ節に転移しているのかまでは正確には分かりません。ですから診断技術が進歩していくことこそが、治療による患者さんの負担を最小限にし、治療の効果を最大限にしていけるのではないかと考えます。

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