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インタビュー

肝臓にがんを残さないために-肝細胞がんの局所治療(1)

肝臓にがんを残さないために-肝細胞がんの局所治療(1)
板野 理 先生

国際医療福祉大学 教授

板野 理 先生

この記事の最終更新は2015年12月08日です。

肝臓がんの治療にはさまざまな局所治療(肝臓にがんを残さないこと)の方法があります。ラジオ波焼灼、エタノール注入、凍結療法それぞれの特徴や歴史的経緯について、慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器) 専任講師の板野理先生にお話をうかがいました。

まずお断りしておかなければならないのですが、凍結療法は先進的な医療ですので、保険適応ではありません。凍結療法に限らず、先進的医療についてよくお問い合わせを受けるところなのですが、ほとんどが「他の治療で治らないものが治る」という治療ではないということです。特に凍結療法はあくまでも局所治療ですので、凍結療法が可能なものは基本的に切除もできるものがほとんどです。その点を踏まえた上で、局所療法でどの治療を選択するかは、腫瘍の位置と大きさによって変わってきます。

凍結療法がラジオ波焼灼に比べて優れている点として、周囲の血管や胆管へのダメージが少ないということが挙げられます。肝臓は樹の枝のような構造になっていますので、奥の深いところ、つまり根元に近いところにある病巣を取るためには、結果的にその先の扇状に拡がった大きな範囲を切除することになります。肝機能の問題でそのような切除が難しい場合にはラジオ波焼灼が選択されますが、根元に近いところを焼灼するとその近くにある胆管も一緒に焼灼してしまい、胆管狭窄(きょうさく)を起こすおそれがあります。しかし凍結療法であれば、このような場合でも胆管へのダメージをある程度少なくできるというメリットがあります。

ラジオ波焼灼で胆管へのダメージを少なくするためには、中にチューブを入れて冷却しながら行うという方法もあります。それぞれの施設で工夫しながら治療を行っています。どの方法が良くてどの方法が悪いというわけではありませんが、治療効果が落ちてしまっては意味がありませんので、それらのことをよく吟味する必要があります。

局所治療の歴史としては、エタノール注入療法が最初に行われ、その2〜3年後にラジオ波焼灼が始まりました。現・順天堂大学教授の椎名秀一郎先生が東京大学に在籍当時、エタノール注入療法とラジオ波焼灼のランダム化比較試験を行った結果、ラジオ波焼灼の優位性が示されたため、それ以来ほとんどがラジオ波焼灼中心となり、エタノール注入療法は行われなくなりました。

しかし、焼灼の場合、熱が周囲にどれくらい伝わって影響をおよぼすかは推測できない部分があります。その点、液体のほうが浸透させる際の拡がりが少ないので、エタノール注入療法では少しずつ小刻みに行って浸透範囲を拡げていきます。これは技術的に難しいとされていますが、テクニックのある医師であれば、熱の危険がない範囲でラジオ波焼灼を行い、焼き残した部分だけにピンポイントでエタノールを注入することができます。

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