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インタビュー

肝細胞がんとは-集学的治療と診療科間の連携

肝細胞がんとは-集学的治療と診療科間の連携
板野 理 先生

国際医療福祉大学 教授

板野 理 先生

この記事の最終更新は2015年12月07日です。

肝臓は私たちのからだの中で唯一、再生する能力を備えています。それだけにさまざまな治療方法があり、各診療科にまたがった横断的な連携が必要とされます。慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器) 専任講師の板野理先生にお話をうかがいました。

肝臓は再生する唯一の臓器です。多少ダメージを受けていても、それなりに肝機能が良ければ、手術で大きく切除しても再生して元の機能に戻ることができます。「どれくらい機能が戻る肝臓か」ということを考えながら、たくさん取っても大丈夫か、なるべくギリギリのところで取るかを判断します。もし取らないほうが良いとすれば、根治性はやや低くなっても他の治療法を選択するということも考え、その症例ごとに治療方針を検討します。

C型肝炎は肝機能が悪くなればなるほど、発がん性が高くなりますが、B型肝炎はそうでもありません。ウイルスに感染しているというだけである程度発がん性はあるのですが、肝硬変がかなり悪くなっている場合とB型肝炎を発症していない場合を比べても、発がん率はさほど変わりません。

C型肝炎の場合は肝機能が悪ければ間違いなく再発してきますし、予後も悪いため、肝機能の温存という意味でも、次の治療が必要になる可能性においても、治療方針が大きく異なってきます。一回の治療では根治せず、おそらく再発するであろうという前提で次回の治療も視野に入れるとすれば、何度も開腹手術を行わずに済むほうがよいのです。

肝切除以外の治療法でよく行われているものとして、身体の外から肝臓に針を刺し、腫瘍とその周囲のみを熱で壊死させるラジオ波熱凝固療法(radiofrequency ablation; RFA)というものがあります。技術のある人が治療をすれば手術と同等の結果が得られるのですが、全国平均などで比較すると手術よりも成績が悪くなります。しかしそれはある意味当然のことで、手術というのは切除した組織を見ることができるので、がんを「取りきる」という点ではやりやすい方法なのです。

病巣の周囲には血管などが走っているため、必ずしも温度分布が一定ではありません。血流の速い部分が近くにあると、その部分の温度が下がってしまうからです。また、画像上焼灼できているように見えていても、焼灼したからといって腫瘍が死滅しているという保証はありません。そのため、ある一定の率で必ず再発というのは起きてしまいますし、再発してきているものは多くの場合、「たちが悪い」つまり悪性度の高いものです。

内科の考えとしては、再発したものに対してまた焼灼を試みるなど、内科でできる範囲内の治療を考えるのですが、そこに固執しすぎるのも問題であると考えます。内科と外科のコネクションが良くないと、外科は外科で肝切除の方がよいと考え、何度も肝切除を繰り返して結果として肝機能を損なってしまうこともありますし、一方で内科は何度もラジオ波焼灼をしようと考えます。また放射線科では、肝動脈にカテーテルを入れて薬剤を送り込むカテーテル治療を得意としていますから、手術の適応があるにもかかわらずカテーテル治療に固執してしまい、治療を繰り返すうちに腫瘍がコントロールできなくなるということもありえます。

慶應義塾大学病院でも以前は各診療科の連携が十分でないところがありましたが、今は非常に良くなっています。この領域では主に外科・内科・放射線科の3つの科が関わっています。施設によってはカテーテル治療を内科が行なっているところもありますが、関東ではカテーテル治療は放射線科が行なっていることが多いでしょう。

ラジオ波焼灼などのいわゆるアブレーションは一般的に内科で行いますが、慶應義塾大学病院はかつて外科でありながらアブレーションを積極的に行うことで有名でした。また当院でしか行っていない凍結治療(凍結融解壊死療法)というものがあります。これは当時、一躍有名になった治療法ですが、現在でも肝臓に対して行っているのは当院のみです。

しかし外科だけでアブレーションと両方をやっていくには時間もマンパワーもリソースが足りませんので、現在は当院でもアブレーションは基本的に内科で行い、開腹や腹腔鏡下で行うものについては外科で担当します。また、エコー(超音波)ガイド下ではなくCTガイド下であれば放射線科の得意領域ですので、それぞれ分担しています。当院では現在、毎週火曜日の朝にカンファレンスを行い、3科合同で全症例を検討しています。その場で各患者さんへの最良の治療法に合わせ各科の分担を決めていくので、比較的スムースに連携ができています。これはここ2年ほどで少しずつ変えてきた部分です。

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