
日本において増加傾向にある大腸がんですが、手術をしてがん腫瘍をとり切れれば、治癒の可能性が高まるがんともいえます。不安ばかりを抱えずに、正しい知識を持って、しっかりと向き合って治療することが重要です。
今回は大腸がんの治療方法と手術後の生活について、焼津市立総合病院 病院長の風間 伸介先生にお話を伺いました。
大腸がんは、肝臓や肺などに転移のある進行したがんであっても、検査で指摘された病変を完全に取り除く手術を行うことで、治癒の可能性が高まるといわれています。
当院では、転移がある場合、当院出身で虎の門病院に在籍されている肝臓外科の応援医師、当院 胸部外科の医師と連携して診断を行い、治療にあたります。また、がんが膀胱や子宮にまで及ぶこともありますが、その場合には、泌尿器科、産婦人科と合同で治療にあたります。
近年では、受診時にがんが広がっていて手術で対応できない場合でも、まずは抗がん剤治療や、抗がん剤治療と放射線治療を併用することで、がんを小さくしたり、広がりを抑えたりする術前治療を行うケースが出てきました。この術前治療を行うことで、手術ができる場合もあります。消化器内科や放射線科の先生と連携を密にし、治療にあたっています。
当院では、傷が小さく、痛みも少なく、回復も早い腹腔鏡下手術を積極的に導入しています。大腸がんの手術というと、お腹にメスを入れる開腹手術をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、より早く大腸がんへの腹腔鏡下手術が導入された欧米では、進行がんに対しての長期成績が従来の開腹手術に劣らないことが報告されています。もちろん患者さんによって適した治療法は異なりますが、2025年において当院では、腹腔鏡下手術が約70%を占めていました。当院の消化器外科 大腸グループの医師1名(2026年4月時点)が、日本内視鏡外科学会の技術認定を受けて治療にあたっています。
また、2018年4月より、直腸がんに対する手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ (da Vinci Surgical System) ”が保険適応されました。当院でも2023年よりロボット手術を保険適応で行っています。ただし、がんの進み具合や、心肺機能の状況を鑑みて、従来の開腹手術で行うこともあります。
がんは腫瘍だけを取り除けばよいわけではありません。がんが周囲にも広がっているため、ある程度広く切除する必要があります。そのため、がんが肛門の近くにできてしまった場合には、括約筋や肛門を含めて切除しなくてはいけない場合があります。その場合には、排便を行うために新たな肛門をお腹に作ることになります。これが人工肛門(ストマ)です。
「人工肛門は避けたい」という思いをお持ちの患者さんは多いと思います。しかし、医療の観点では、できるだけがんを取りきりたい。その両者の思いを両立するために、括約筋間直腸切除(ISR)手術という、肛門を温存する手術が開発されてきました。括約筋間直腸切除手術は、一時的には人工肛門が必要となりますが、最終的には自然の排便を目指します。
当院では、大腸がんの抗がん剤治療は、外科と消化器内科の両方で行っています。外科では手術後に化学療法が必要となった患者さん、消化器内科では手術を行っていない患者さんが多いですが、特に外科と消化器内科で治療内容、方針などが変わることはございません。抗がん剤治療が必要となる患者さんの治療法の検討のために、カンファランスを定期的に開催し、診療科を横断して適切な治療を行える体制を築いております。
また放射線治療に関しては、放射線科医師と相談して治療方針を決定しています。
大腸がんの再発率は、ステージによって異なります。一般的に、ステージIは約5%、ステージIIは約15%、ステージIIIは約30%で再発が起こるといわれています。
また、大腸がんの中でも直腸がんの場合、それ以外のがんよりも再発率が高いとされます。
再発の約80%は手術後3年以内に、95%は手術後5年以内に起こるといわれているため、当院ではこちらを念頭に、術後のサポートを行っております。
再発の95%が手術後5年以内に起こることから、5年間の定期的検査が目安となります。日本の大腸癌研究会が定期的検査の方法の指針を出しており、それに従って行われます。
当院では、血液検査は3か月ごと、CT検査は半年ごと、大腸の検査は1〜2年ごとに行うことをベースにしています。
当院が手術後に退院してよいと考えている状態は、自宅でずっと寝ていなくてはいけない状態ではありません。退院後、ある程度は自分のことが自分でできる、自立して生活ができる状態というのを、ひとつの目安としています。そのため、退院してすぐに患者さんが元の生活に戻れるよう、サポート体制を構築しています。
また当院は、高齢の患者さんの割合が多いのも特徴です。術後の状態や、社会的事情で自宅退院が難しい患者さんに対しては、早くから地域医療連携室に介入していただき、回復期の病院や療養施設への転院も検討しています。
大腸がんの手術後には、食事の取り方に留意が必要です。こちらについては、看護師や栄養士がサポートしています。また、手術の傷への心配、就労の心配については、医師の診察のほかに、看護師による看護相談も行っています。大腸がんでは人工肛門(ストマ)が必要となることもありますが、看護師が外来での管理、相談対応を行っています。
さらに患者さんだけではなく、患者さんのご家族も含めた精神的なサポートについても、精神科と連携して行っています。手術直後だけではなく、治療の過程や再発時の精神面でのケアなどにも対応し、安心して手術前の生活に戻っていただけるよう体制を整えています。
今や日本人の2人に1人ががんにかかるとはいえ、大腸がんの手術などで入院して治療を行うことは、患者さんご本人はもちろんのこと、そのご家族にとっても重大事です。
当院では、入院から手術、そして退院後まで、身体的にも精神的にも、患者さんとご家族が安心して無事にご自宅に帰っていただけるような治療をご提供できるよう努めています。職員一丸となってサポートいたしますので、一緒に、がんに立ち向かっていきましょう。
焼津市立総合病院 病院長兼総合研修センター長
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情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
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