大腸がんは、大腸にできる悪性の腫瘍です。食生活の欧米化などを背景に、近年増えてきています。
大腸は、上の図のように、盲腸(もうちょう)、結腸(けっちょう)、直腸(ちょくちょう)に分かれています。さらに結腸は、上行結腸(じょうこうけっちょう)、横行結腸(おうこうけっちょう)、下行結腸(かこうけっちょう)、S状結腸(えすじょうけっちょう)に分かれています。
また、大腸の壁は、内側から粘膜層(ねんまくそう)、粘膜筋板(ねんまくきんばん)、粘膜下層(ねんまくかそう)、固有筋層(こゆうきんそう)、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜(しょうまく)に分かれています。このうちどこまでがんが広がっているかによって、早期がん、進行がんの区別をしています。
粘膜下層までにとどまっているものを早期がん、固有筋層より先まで広がっているものを進行がんといいます。
下記のような方は、大腸がんになりやすいと言われています。
早期がんは無症状であることが多く、大腸がん検診で“精密検査が必要”とされて見つかることが多いです。
進行がんの症状は、がんによる出血や血便、便の通りが悪くなることによる便秘や腹痛などですが、その起こりやすさはがんができる部位によって異なります。
大腸がんの検査として、主に以下のものを行います。
最初のスクリーニングのための検査として便潜血検査(べんせんけつけんさ)などを行います。便潜血検査は、肉眼では見えない便の中の血液を検出する検査です。
直腸指診とは医師が肛門に指を挿入して調べる検査です。しこりや出血があるかどうかを調べます。
注腸造影検査(ちゅうちょう ぞうえい けんさ)とは、大腸に造影剤を注入し、X線撮影をして詳しく調べる検査です。がんによって大腸が狭くなっている様子が見られます。
また、内視鏡検査によって、がんがあると疑われる部位の組織を一部採取して(生検(せいけん)といいます)がんかどうかを詳しく調べます。
がんが他の場所に転移していないか、がんの周りの臓器との位置関係などを調べるための検査です。大腸がんでは、近くのリンパ節や肝臓への転移が多くみられます。
大腸がんの治療法は、進行の程度によって決まります。
局所にとどまっている場合には、内視鏡治療、手術療法が治療の基本となります。
また、進行がんでリンパ節や肝臓などに転移したがんの場合は、手術可能であれば手術を行い、抗がん剤治療(薬物療法)を組み合わせて治療を行います。手術が困難な場合には、抗がん剤治療を主体とした治療を行います。
内視鏡的ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてき ねんまく せつじょじゅつ:EMRと略されます)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてき ねんまくかそう はくりじゅつ:ESDと略されます)などの内視鏡を用いた治療を行います。
内視鏡を用いた治療は、リンパ節などへの転移の可能性がほとんどなく、内視鏡によってがんを取り切れる大きさと場所にある場合に行われます。内視鏡による治療を行った後で、転移の危険性が高いと判断された場合には、追加の手術が行われることもあります。
基本的に手術でがんのある部位と周りのリンパ節を切除します。がんの発生した場所によって切除する部位が異なります。がんの広がりや切除する範囲によって、合併症や後遺症の頻度はさまざまです。
直腸がんの場合には、骨盤の深い場所にあるがんを治療するために、周りの神経や筋肉を含めて切除することがあります。このため、排便や排尿、性機能に後遺症が残る場合があります。また、人工肛門といって、便を体の外に出すための出口をつくることもあります。
また、抗がん剤による薬物療法は、手術に引き続いて治療効果を高める場合や、手術で切除することが困難な場合に行われます。がんが再発した場合にも抗がん剤治療が行われます。
進行した大腸がんに有効な抗がん剤が開発されており、複数の薬剤を組み合わせることによって治療の効果を高めています。治療に伴う副作用を軽減する“支持療法”が進歩してきていることから、入院ではなく外来で通院しながら安全に治療を継続することもできるようになってきています。大腸が狭くなっている場合や出血がある場合には、内視鏡を用いた処置を行ったり、放射線治療を行ったりすることもあります。
帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 教授
帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 教授
日本内科学会 総合内科専門医・認定医日本消化器病学会 消化器病専門医日本肝臓学会 肝臓専門医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本癌治療学会 会員日本緩和医療学会 会員日本がんサポーティブケア学会 理事日本ヘルスコミュニケーション学会 代議員
患者さんとご家族、地域の視点でがんを診る。
日本人の2人に1人が一生のうちにかかる「がん」。がんの診療、臨床研究とともに、研修教育に携わる。がん対策の取り組みの一環として医療に関する信頼できる情報の発信と、現場と地域のニーズに応じた普及の取り組みを実践している。
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