大腸がんが固有筋層(消化管粘膜下の筋肉層)を超えてリンパ節に転移している場合はステージIII以上となり、外科手術だけでは完治を目指すことが難しくなります。そのため、通常の外科手術に加えてリンパ節郭清や追加化学療法を行う必要があります。本記事では、リンパ節転移をきたした大腸がんの治療法について、渡邉純先生に教えていただきました。
リンパ節とは、細菌や異物・老廃物を濾過する免疫器官で、静脈に沿って全身に多く存在しています。
大腸の外側には腸間膜という、腹部にある消化器を支える膜があり、そこにはリンパ液が流れています。大腸がんは大腸の内側の壁(粘膜)から発生しますが、その後粘膜下層への浸潤が深く進むと、腸管壁の外側に点在するリンパ節への転移を疑う必要が出てきます。
大腸がんがリンパ節に転移していた場合、ステージIII以上に分類されます。そして、がんがリンパ節へ何個転移しているかによって、さらにステージIIIa、IIIbと細かく分類されます。
がん細胞がリンパ節に流れ着いたとしても、たいていの場合は自己免疫機能がはたらくため、がん細胞をせき止めたり破壊したりして、転移をくい止めます。しかし、自己免疫に打ち勝ったがん細胞はリンパ節に転移し、そこからリンパの流れに沿ってその先のリンパ節に転移していきます。
リンパ節転移が発生しやすい場所は、原発がん(最初にできたがん)の場所に依存します。これは、がんがリンパの流れに沿って転移していくためです。たとえば、上行結腸側の大腸にがんが発生すれば上行結腸側の大腸からリンパ流を受けるリンパ節、下行結腸側なら下行結腸側の大腸からリンパ流を受けるリンパ節に転移しやすくなります。
大腸がんを早期発見できれば転移もほとんどありませんが、時間の経過とともに転移の確率は高まり、大腸から離れた場所に転移する(遠隔転移)可能性も高まります。リンパ節への転移を防ぐには、なるべく早くがんを発見し、治療することが大切です。
リンパ節転移をきたしても、はっきりとした症状は出ません。自覚症状からの発見が難しいため、転移が生じる前に、定期検診や大腸がん検診などを活用して早期発見することが重要です。
リンパ節郭清とは、がん周辺のリンパ節を切除する手術のことです。手術前の検査で、がんがリンパ節に転移しているかどうかある程度の予測は立てられますが、実際にどの程度転移しているかは手術をしてみなければ分かりません。そのため、がんの取り残しがないように、がんの生じた場所だけでなく、その先のリンパ節までを余裕を持って切除する必要があります。
リンパ節郭清は、その切除範囲によって以下のように分類されます。
腹腔鏡下手術とは、皮膚に3〜5cmの小切開と4か所の小さな穴を開け、それぞれの穴から専用のカメラ(腹腔鏡)と手術道具を挿入して行う手術方法です。
腹腔鏡下手術のメリットは以下のとおりです。
大腸がんがリンパ節に転移していた場合、外科手術だけでは完治に至ることを目指す治療として不十分なことがあります。なぜなら、リンパ節転移を伴う大腸がんでは、リンパ節から他臓器に転移するリスクが高くなるからです。
リンパ節転移をきたした大腸がんは、基本的には外科手術と化学療法(6か月の抗がん剤治療)を併用した治療をすれば、がんの再発率は低くなることが分かっています。
抗がん剤の種類は大腸癌治療ガイドラインによって定められています。副作用の強さや、点滴と飲み薬の組み合わせ方など、患者さんによって合う方法が異なりますので、担当医とよく相談して決めることが大切です。
関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授
関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授
日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医日本消化器病学会 消化器病専門医日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医・大腸肛門病指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医日本臨床腫瘍学会 暫定指導医
世界も認める大腸がん腹腔鏡手術のニューリーダー
大腸がんの腹腔鏡手術を専門とする消化器外科医。
少年時代に受けた胸腔鏡手術の経験から医学の可能性を見出し、医師を志した。
患者さんへ最良の手術を提供することを信念に、腹腔鏡手術を中心に大腸がん治療を提供。
内視鏡手術の技術認定医であり、その技術力の高さは国際的にも定評がある。
これまで述べ1,500例を超える腹腔鏡手術を執刀。
横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター 外科 准教授を経て、2024年より関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授に就任。
渡邉 純 先生の所属医療機関
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