この記事の最終更新は2016年07月27日です。
ストーマ(人工肛門)の造設はボディイメージの変化とともに排泄経路の変更を伴いますが、患者さんは手術後の生活を具体的にイメージすることが難しいことがあります。また、ストーマの造設位置を決めるときには、患者さん自身の管理が困難にならないよう、ストーマサイトマーキングという作業が不可欠と言われます。皮膚・排泄ケア認定看護師として患者さんをサポートしている横浜市立大学附属市民総合医療センター看護部の宮田晶代看護師にお話をうかがいました。
患者さんへの説明の際には、ストーマケアのスタッフを育成する講習会などで使用しているモデル(模型)を使用し、実際にお腹にあててイメージを確認してもらうようにしています。その際、その出口は人工物ではなくご自身の腸でつくるということをお伝えしています。
今までと変わる点として特にご説明しているのは、括約筋の機能を持たないため、自分の意志とは関係なく排泄するため、便や尿などの排泄物をためておく袋を貼って管理することです。それが患者さん本人の腹部のどの位置に造設される予定であるのかを確認しながら説明を行います。
「人工肛門」という言葉のイメージから、何か人工的に作られた排泄口などがお腹に取り付けられるように思う方も中にはいらっしゃるようです。そうではなく、自分自身の腸の一部でお腹に出口をつくるのだということをお話しするようにしています。造設された人工肛門を初めて見たときに、多くの方が衝撃を受けます。その衝撃を少しでも少なくするために手術前の説明は重要です。
ストーマサイトマーキングとは、患者さんのお腹のどこにストーマを造設するかを術前に決めることをいいます。横浜市立大学附属市民総合医療センターでは、緊急の場合も含め全例に対してストーマサイトマーキングを行っています。このストーマサイトマーキングをするかしないかによって、術後の合併症の出方にも違いがあるとされています。
お腹のどこにしわができるかは人によって個人差があります。体型や着衣の種類のほか、過去の手術痕などの影響もあり、ストーマの周囲に面板(めんいた)と呼ばれる装具を貼るための平面を確保できないと、管理が困難になるといわれています。
術後の管理困難を避けるためには、ストーマサイトマーキングをすることがもっとも有効であり、手術後の受け入れにも影響します。横浜市立大学附属市民総合医療センターでは全例にストーマサイトマーキングを行うように医師と協力して実施しています。他の施設でも同様に実施しています。
手術する部位によってストーマを造設できる範囲はある程度限定されますが、ストーマサイトマーキングを行うときには担当医と話し合いを行います。私たちは患者さんが自分で見えて、なおかつ管理できるベストの位置を提案します。時にオペレーター(術者)の手術する部位から考える希望の位置とは異なることもあり、話し合いとなることもしばしばあります。
患者さんのお腹のどこにしわが寄るかを一緒に確認しながら担当医と話し合うこともあり、ストーマサイトマーキングを実施することで患者さん自身も「あ、ここにできるんだな」という心の準備をしていくという、重要な作業のひとつになります。私たちは術後の生活にできるだけ支障がないように考え、日常生活やお仕事の話などをうかがいながら手術後の生活を一緒に想像しながら、マーキングを行っています。
宮田 晶代 さんの所属医療機関
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大腸がんの腹腔鏡手術が主な専門。そのほか、大腸がんの治療全般も専門。大腸がんの手術では低侵襲で安全な手術を目指し、合併症発生率も低い。ICG蛍光法を用いた血流評価やリンパ流評価によるオーダーメイドの手術療法の開発なども行っている。直腸がんついては、肛門温存手術の実績も多数。
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