第54回日本臨床免疫学会総会が2026年10月22日〜24日の3日間、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催されます。総会テーマは「超領域で紐解く免疫病態の地平」。さまざまな免疫疾患における基礎研究と臨床領域の枠を超えた数々のプログラムが用意されています。会長を務める田村 直人(たむら なおと)先生(順天堂大学医学部 膠原病内科学 教授)に、総会のテーマに込めた思いや見どころ、臨床免疫学のこれからについて伺いました。
今回の総会テーマは、「超領域で紐解く免疫病態の地平」としました。「超領域」とは、診療科や専門領域を超えて、という意味があります。医師のみならず研究者やさまざまな職種の方々と集い、知識を共有しながらさらに前へ進んでいきたいとの思いを込めました。この背景には、免疫が関わる病気はさまざまな診療科で担当されているものの、免疫学的な病態には多くの共通点があるということがあります。また免疫学は進歩が著しい分野であり、だからこそ、異なる分野の研究者や医療者が横につながり、病気の解明や新たな治療へ結び付けていく機会を持つことが欠かせないのです。
この総会の意義は免疫学の基礎研究と臨床の現場をつなぐことにもあります。特に若手の臨床医には、病気の背景にある免疫病態や最新の研究成果への理解を深めていただきたいと思っています。一方で、基礎研究者には臨床現場でどのような課題があり、どのような医療が実践されているのか知っていただくことが重要です。それぞれの立場から活発に議論し知識をアップデートするとともに、成果を共有することで新たな研究や診療へとつながる機会になればと考えております。
総会のプログラムでは、免疫学における基礎研究から臨床病態まで幅広いテーマを取り扱います。中でも注目していただきたいのは、2025年のノーベル生理学・医学賞受賞者である坂口 志文先生をお招きする「ノーベル賞受賞記念講演」です。坂口先生はご存じのとおり、免疫のはたらきを適切にコントロールする制御性T細胞の研究で知られ、免疫学の発展に大きく貢献されてこられました。現在、免疫関連の治療においてはさまざまな試みが行われているので、大変意義深いご講演になると期待しています。
また、本学会の免疫細胞療法委員会による「免疫細胞療法の最前線」というシンポジウムも企画しています。こちらも、今後期待される最新の治療法について議論いただく予定です。また、日本免疫学会 理事長で、腸管免疫研究を牽引する竹田 潔先生にもご講演いただきます。腸管免疫の分野は今非常に注目されており、免疫学の新たな可能性を考えるうえで大変興味深い内容になると考えています。
さらに、若手研究者による「未来を拓く免疫の地図:若手PIが描く臨床免疫学の最前線」というシンポジウムも予定しています。これからの臨床免疫学を担う若手の研究者や臨床医の先生方が担当する企画です。新しい研究や発想が、今後の医学のさらなる発展につながることを期待しています。そのほかにも興味深いシンポジウム、ワークショップ、教育講演を準備しています。会期中には、日本臨床免疫学会が設ける「免疫療法認定医制度」の認定のための教育プログラムで、さまざまな病気の免疫療法のレクチャーも行われます。免疫の仕組みに基づく治療について正しい知識と実践力を持つ医師を育成することで、よりよい医療を患者さんに届けることを目的とした本学会の制度です(URL: https://www.jsci73.net/information/)。
私が専門とする膠原病においては、この20年ほどで免疫学の進歩を背景に診療が大きく変化しました。たとえば、膠原病の1つである関節リウマチでは、基礎研究から得られた結果から、病態に関与する免疫の異常を効果的に抑える生物学的製剤などの分子標的治療薬などが登場し、治療が劇的に進歩しました。また、逆に臨床の現場での薬剤の有効性や治療成績から得られた知見が基礎研究へと還元され、基礎と臨床のクロストークがさらなる発展を後押ししてきました。基礎研究の新しい解析技術やAIの進展による進歩を臨床の医師も理解し、新規治療の展開へとつなげていくことが重要だと考えています。
そうしたなか、私が日々の診療で大切にしているのは、患者さん一人ひとりの病気としっかり向き合うことです。膠原病は長い経過をたどる病気であり、同じ病気であっても患者さんによって病状は大きく異なります。現在は治療の選択肢も増えてきましたので、患者さんとよくお話ししながら、その方にとって最もよい治療を一緒に考えていくことが求められています。今後は、新しい治療の開発や実践、知識の普及にも貢献したいと考えています。患者さんごとに最適な治療を選択する層別化医療や個別化医療もさらに進んでいくでしょう。そのような医療を次の世代へつないでいくためにも、若手研究者や臨床医の育成にも力を注いでいきたいと思っています。
総会に参加される先生方には、新しい知識を取り入れ、ぜひ活発に議論いただければと考えております。免疫学は非常に進歩の早い分野です。今回の総会が新しい知見や出会いを持ち帰り、それぞれの診療や研究につなげていただく機会になれば大変うれしく思います。
当学会は、膠原病だけでなくさまざまな免疫の病気を横断的に扱う学会です。これらの病気に関してはまさに今もさらなる研究が続けられており、今後も新しい治療が次々と生み出されてくることでしょう。私たちは基礎研究と臨床現場をしっかり結び付けながら、その成果をなるべく早く患者さんへ還元していきたいと考えています。高齢の患者さんも増えていることから、有効性だけでなく安全性にも十分配慮しながら、よりよい医療の実現につなげていきたいと思っています。
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