サノフィ株式会社は8月5日、東京都内でプレスセミナーを開催し、2026年6月に製造販売承認を取得した免疫性血小板減少症(ITP)治療薬「ウェイリズ錠400mg(一般名リルザブルチニブ)」について紹介しました。ウェイリズは、多面的な免疫調節を介してITPの病態にはたらきかけることを目指した世界初のBTK阻害薬です。血小板数の改善だけでなく、患者さんを悩ませてきた倦怠感などQOL(生活の質)の改善も期待されています。
ITPとは、本来体を守る機能を果たす免疫の作用によって、血液の中の血小板が少なくなってしまう病気です。血小板は出血を止める重要な役割を担っているため、減少すると皮膚の紫斑や鼻血、歯ぐきからの出血などが起こりやすくなります。セミナーに登壇した大阪大学医学部附属病院 輸血・細胞療法部 病院教授の加藤 恒先生は、ITPについて「血小板が壊されるだけでなく、血小板をつくるはたらきも低下します。自然免疫なども関わる複雑な免疫異常が病態に関係しています」と説明しました。
ITPは国が指定する指定難病で、日本のITP患者さんの総数は約2万人、毎年新たに約3,000人が発症していると推計されています。医療費助成を受けるための「特定医療費(指定難病)受給者証」を持っている患者さんは約1万7,000人です(2023年時点)。
治療には副腎皮質ステロイドやトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)などが用いられますが、ステロイドの長期使用による副作用や、既存治療で十分な効果が得られない患者さんがいることなどが課題となっています。
さらに近年注目されているのが、出血以外の「見えない症状」です。世界13か国で実施されたI-WISh調査では、倦怠感や不安、抑うつなどの「見えない症状」をはじめ、身体活動や社会生活、仕事など、さまざまな面で患者さんのQOLが損なわれていることが示されています。加藤先生は「血小板数や出血症状だけでは捉えきれない患者さんの倦怠感や疲労感など、日常生活へ影響する『見えない症状』にも目を向けることが大切です」と、QOLを考慮した治療の必要性を指摘しました。
こうした課題を背景に開発されたのが、世界初のBTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬「ウェイリズ」です。BTKとは自己抗体の産生や血小板の破壊、炎症反応など、ITPの病態に幅広く関わる分子です。ウェイリズはこのBTKを阻害することで、自己抗体の産生、血小板の破壊、慢性炎症という複数の経路にはたらきかける「多面的な免疫調節」を特徴としています。
サノフィ株式会社 スペシャルティケアビジネスユニット 希少血液疾患フランチャイズ ヘッドの富永 重人氏は「『多面的』とはBTKが血小板の減少につながる複数の免疫異常に関わっていることを意味しています。また、『免疫調節』とは標的とする部位に対してピンポイントで薬効をもたらす製剤設計を指します」と説明しました。従来の血液がん領域のBTK阻害薬と比べ、ウェイリズはBTKへの選択性を高め可逆的に結合するよう設計されています。これにより標的以外への作用を抑え、心毒性などの副作用や出血リスクの低減を目指しています。富永氏は「臨床試験に日本も参加する方向で調整を進めた結果、日本での承認取得が実現し、ドラッグ・ラグを回避できました」と話し、海外から大きく遅れることなく国内の患者さんに新たな治療選択肢を届けられる意義を強調しました。
ウェイリズの有効性と安全性は、既存の治療で十分な効果が得られなかった成人の持続性・慢性ITP患者202例を対象に、国際共同第III相試験「LUNA 3試験」で検証されました。LUNA 3試験では、ウェイリズを投与した患者さんで血小板数の改善が認められたほか、併用していた副腎皮質ステロイドやTPO-RAを減量・中止できた患者さんもみられました。血小板数の改善だけでなく、患者さんを悩ませる倦怠感の改善も示されています。主な副作用は下痢、悪心、頭痛、腹痛などで、多くは軽度から中等度でした。
加藤先生は「ITPの患者さんにとって血小板数を正常に近づけ、出血を心配することなく生活を送れることは極めて重要です」としたうえで、「今回の試験では血小板数の改善に加えて倦怠感の改善も認められました。血小板数の改善が不十分だった患者さんでも倦怠感スコアが有意に改善しており、患者さんのQOLを考えるうえでも重要な結果だと考えています」と話しました。
セミナーでは、ITP患者さんである田中 明子さん(仮名)へのインタビュー動画も上映され、診断時の不安や治療の副作用による体調の変化、妊娠・出産時の治療変更の苦労など、日常生活の中で病気と向き合ってきた経験が紹介されました。田中さんは「主治医とよく話し合い、自分に合った治療を見つけることが大切です。ITPになったからといってやりたいことやライフイベントを諦める必要はありません」と、同じ病気と向き合う患者さんへメッセージを寄せました。
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