大腸がんの主な要因は、食生活の偏りや運動不足といった生活習慣、遺伝的リスクなどとされています。さまざまな要因によって大腸がんを発症した場合、一般的には便の異常がみられますが、がんの発生部位によっては自覚症状が現れにくいこともあるといいます。大腸がんの原因と症状について、引き続き、渡邉純先生に教えていただきました。
大腸がんのはっきりとした原因は解明されていませんが、これまでの研究により、大腸がんを引き起こす可能性としていくつかの要因が指摘されています。
具体的な大腸がんの要因としては、飲酒や肥満といった生活習慣に関わることや、赤肉(牛・豚・羊の肉)や加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)を多量摂取する食生活の欧米化が挙げられます。
肉類中心で高脂肪・高タンパクかつ低繊維成分の食生活を続けると、便が大腸に留まる時間が長くなり、便に含まれる発がん性物質が影響して、がんが発生しやすくなるといわれています。
喫煙は、発がん性物質を取り込むため、大腸だけではなく全身に影響を与えるといわれています。また、たばこを吸う方はそうでない方に比べて、約1.4倍大腸がんになりやすいともいわれています。
大量のお酒を摂取することもリスク要因になるといわれています。一般的に、欧米人に比べて日本人のほうがアルコールの影響を受けやすいため、がんに罹患しやすいと報告されています。
デスクワーク中心で慢性的な運動不足に陥っている方は、大腸がんになりやすいといわれています。リスクを軽減するためにも、日々の生活に運動を取り入れることが大切です。
男性では、特にBMIが27以上の肥満の方が大腸がんに罹患する可能性が上昇するという報告があります。
大腸にポリープができやすい体質の方がいます。これには遺伝的要因が関係すると考えられています。現在、遺伝的要因として明らかなものは、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス大腸がんがあります。ほかにも、高身長の方ほど発症リスクが高いという身体的要因や、家族内にリンチ症候群の方がいらっしゃると発症リスクが高くなるといった遺伝的要因が指摘されています。
がんの予防策として、以下のことが挙げられます。大腸がんだけではなく、ほかのがんや病気の予防策と共通する部分が多いですが、日常生活での少しの心がけが、がんに罹りにくい体づくりの基本といえるかもしれません。
早期の大腸がんは自覚症状がほとんどありません。進行した大腸がんでは、腫瘍の大きさや部位により症状が変わります(詳細は後述します)。
「早期」とは、腫瘍が粘膜表層より深いところまで広がっていない段階のことです。早期大腸がんの場合、自覚症状はほとんどみられません。がんが粘膜を超え、大腸の壁の外側に広がるにつれて症状が現れるようになります。
一般的に、早期大腸がんは、大腸がん検診や人間ドックなどの便潜血検査でみつかることが多いです。自覚症状がまだない早期の段階で大腸がんを発見するには、市町村の検診などで行われる便潜血検査を定期的に受けることが肝要です。また、日常的に便を観察することでも気付ける可能性があります。
進行大腸がんでは、下記の症状が生じることがあります。
固有筋層*以降までがんが浸潤**した進行大腸がんでは、さまざまな症状が現れてきます。たとえば、血便や肛門からの出血、便が細い、下痢と便秘を繰り返す、残便感などがあります。また、腹部の張りやしこり、腹痛、貧血や嘔吐、急激な体重減少などの症状も現れることがあります。
*固有筋層:消化管粘膜下の筋肉層のことで、消化管を動かす筋肉。
**浸潤:がんが周辺器官に染み出るように直接広がること。
また、ひとくちに進行大腸がんといっても、腫瘍の大きさや発生部位によってその症状はさまざまです。
それでは、部位ごとの症状の特徴を確認しましょう。
上行結腸側にできた結腸がんは、他部位にできた大腸がんに比べても特に症状が出にくく、軽い腹痛や腹部の違和感程度の場合も多いとされています。腫瘍が大きくなることで腹部のしこりや原因不明の貧血が起こり、検査を受け、その際に発見されることもあります。
下行結腸側にできた結腸がんでは、比較的早期から便に血が混ざったり、血の塊がみられたりするなどの症状が現れます。ほかにも腹痛や便が細くなる、残便感、便秘と下痢を繰り返すなどの症状が現れます。放っておくと、便やガスも出なくなり腸閉塞に至ることがあります。
下行結腸側にできた結腸がんと同様の症状がみられます。肛門に近い部位のため、痔と間違えられやすい出血があります。がんが膀胱や子宮に浸潤すると、排尿障害、血尿、膣から便が出るなどの症状があります。
ここまで述べてきたように、大腸がんの自覚症状は便に関するものが多く、なかでも特徴的といえるのは血便です。特に、頻度の高い血便を放置してしまうと、大腸がんの早期発見を見逃し、症状が進行してしまう可能性があります。そのため、血便がみられた場合には病院の受診を検討したほうがよいでしょう。
大腸がんの症状を見逃さないためには、毎日、排便の有無や便の状態を確認することが重要です。
痔になると大腸がんと同様に血便が出ますが、痔による出血と大腸がんによる出血には違いがあります。
痔の場合は、排便時の便の通過によって出血するため、便の周りに血がつくことはありません。また、比較的出血量が多く、血液が便器に垂れることもあります。
一方で、大腸がんの場合は少しずつじわじわと出血し続け、出血量が増えると便の周りに血がつくようになります。ただし、上行結腸や横行結腸のがんなど肛門から遠いところにできたがんは、血液が途中で便にまぎれてしまい、血便として現れにくいことがあります。
痔と大腸がんでは病気の種類がまったく異なるため、その違いを理解しておくことが大切です。
関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授
関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授
日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医日本消化器病学会 消化器病専門医日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医・大腸肛門病指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医日本臨床腫瘍学会 暫定指導医
世界も認める大腸がん腹腔鏡手術のニューリーダー
大腸がんの腹腔鏡手術を専門とする消化器外科医。
少年時代に受けた胸腔鏡手術の経験から医学の可能性を見出し、医師を志した。
患者さんへ最良の手術を提供することを信念に、腹腔鏡手術を中心に大腸がん治療を提供。
内視鏡手術の技術認定医であり、その技術力の高さは国際的にも定評がある。
これまで述べ1,500例を超える腹腔鏡手術を執刀。
横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター 外科 准教授を経て、2024年より関西医科大学医学部 下部消化管外科学講座 主任教授に就任。
渡邉 純 先生の所属医療機関
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