一般社団法人日本癌治療学会と株式会社メディカルノートによる第2回の連携ウェビナーが2026年9月29日に開催されました。今回は福島県立医科大学 消化管外科学講座 主任教授の河野浩二先生による「第64回日本癌治療学会学術集会の紹介」、九州大学病院 先端医工学診療部(消化管外科) 教授の沖英次先生による「オンラインプラットフォーム『がんちスタジオ』の紹介」の2つの講演がありました。それぞれの内容をダイジェストでお送りします。
河野先生:
私は2026年10月22日~24日に神戸コンベンションセンター(兵庫県神戸市)で開催する第64回日本癌治療学会学術集会(JSCO2026)の会長を拝命しています。今回の学術集会のテーマは「One team to Conquer Cancer」としました。「Conquer」には、がんを征服する、克服するという意味に加え、がんと共生し共存していくという広い意味を込めています。学会ポスターは、チームとして1つの目標に向かって少しずつ上っていく様子をイメージし、病気を退治するという意味も込めて福島県の郷土玩具である「赤べこ」も描きました。
参加人数は、JSCOと同時開催するアジア臨床腫瘍学会(AOS)を合わせて計7,000名程度を見込んでいます。AOSはJSCOが中心となりアジア諸国との連携で2019年に設立した学会で、今回が6回目の開催となります。アジア約20か国から参加者が集い、国際色豊かな開催となる予定です。

河野先生:
プログラムの中で注目いただきたいのは、著名人をお招きして行う特別講演です。2025年にノーベル生理学・医学賞を受賞された坂口志文先生には、ノーベル賞受賞に由来して制御性T細胞についてご講演いただきます。楽天グループの三木谷浩史会長には「医療イノベーション」と題し、同グループの子会社である楽天メディカルが手がける光免疫療法についてお話しいただきます。筑波大学の柳沢正史先生には「睡眠とがん治療」についてお話しいただくほか、悪性リンパ腫を経験されたフリーアナウンサーの笠井信輔さんにはご自身の体験やご家族とのつながりについて、歴史学者の磯田道史先生には東日本大震災とも関連して「災害と日本の歴史」についてご講演いただく予定です。
河野先生:
海外からも多数の演者をお招きして国際的なセッションを予定しています。がんゲノム医療をリードする米国Caris社からはCEOのデビッド・スピツラー先生をお招きし、アメリカとシンガポール、日本の専門家による、がんゲノム医療の未来を語る国際シンポジウムを行います。米国臨床腫瘍学会(ASCO)会長のエリック・スモール先生とは、JSCOとASCOによる日米合同の国際シンポジウムも行います。また、学術誌Nature誌の編集者をお呼びし、若手JSCO会員を対象に論文執筆をレクチャーいただくマスタークラスも実施します。
会長企画としては、2026年6月に承認された腫瘍溶解ウイルス製剤「テロメライシン」の最前線、現在実臨床では頭頸部がんに用いられている光免疫療法の他の臓器への展開、ロボット手術の複数機種への展開の動向を取り上げます。このほか、領域横断セッション、臓器別セッション、臨床試験の結果を世界で初めて発表する「JSCO frontier」、海外学会で発表された注目演題を再度取り上げるアンコール演題を用意しています。
河野先生:
さらに本学術集会では、「分子的残存病変(MRD、molecular residual disease)検査の適正臨床利用に関する見解書」の第2版、「多がん種早期検出(MCED、Multi-Cancer Early Detection)検査の適正な活用に関するガイダンス」の第1版、大腸がんなどをきたしやすい遺伝性疾患であるリンチ症候群に関する見解書の第1版を、それぞれ初めて公表します。
懇親会やレセプションでは、福島県産の日本酒や福島の物産・名品を賞品としたビンゴゲーム、物産展なども準備しています。医療関係者の皆さんには、神戸でお会いできることを楽しみにしています。
沖先生:
私はJSCOで、広報・渉外委員会の委員長を務めています。JSCOでは、がんに関する正しい医療情報をお届けするためさまざまなサービスを展開しています。一般の方向けには、YouTube(がんチューブ、URL:https://www.youtube.com/channel/UCcotnUkPgK2tEZLReKxmuBg)やInstagram(URL:https://www.instagram.com/official_jsco/?hl=ja)での動画配信などを行っています。今回ご紹介する「がんちスタジオ」(URL:https://gstu.members-web.com/gstu/)は、医療従事者を対象としたオンデマンドの学習サービスプラットフォームです。
沖先生:
がん患者さんによりよい治療を提供するためには、日々医療従事者が学びを続けることが不可欠です。しかし、日常の診療が複雑化・多忙化するなかで、学会活動や教育セミナーに参加する時間を確保することは極めて困難になっています。学術集会に参加できても聴講できなかったセッションの再確認は難しく、参加できた場合でも振り返りの機会は乏しい現状があります。また、医学部の学生や研修医が学会の知見に触れる機会が限定的である点も課題です。そこで、時間や場所の制約を排除し、学会の知的資産をアーカイブ化して繰り返し学べる基盤を構築することにしました。
沖先生:
「がんちスタジオ」は学会が運営していることによる信頼性が一番の強みです。厳選されたセミナーや学術集会の講演動画を集約することで、学会終了後も繰り返し視聴することができます。一般公開コンテンツと会員限定コンテンツに分かれており、タグ検索も可能で、目的のコンテンツに直感的にたどり着ける構成となっています。
現在は、2025年に行われた第63回学術集会の関連コンテンツの一部を公開しているほか、若手医師から専門医までのキャリア形成を支援するコンテンツも用意しています。たとえば、Pythonの基礎知識やGoogle Colabの使い方を全6回で解説する「機械学習・AI習得ハンズオンセミナー」は臨床研究に即活用いただけると思います。今後は、JSCOが作成・編集している「診療ガイドライン」を順次全て公開する予定です。これによって、がん医療の標準化にも貢献できるのではないかと考えています。最終的にはe-learningなどのさまざまなシステムとも連動させ、コンテンツの充実を確実に図っていきたいと思っています。医療従事者の方はぜひ一度ご覧いただければ幸いです。
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