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高血圧を「測る」文化を社会へ――第48回日本高血圧学会総会が目指す未来

公開日

2026年10月01日

更新日

2026年10月01日

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2026年10月01日

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日本には約4,300万人の高血圧患者さんがいるとされています。しかし、適切に診断や治療されていない人も多く、十分に血圧をコントロールできている人は全体の約27%にすぎません。こうした状況を変えるため、日本高血圧学会ではさまざまな取り組みを進めています。2026年10月10~12日にライトキューブ宇都宮(栃木県宇都宮市)で開催される第48回日本高血圧学会総会では「新時代のネットワーク高血圧学―時空間をつなぐ次世代医療へ」をテーマに、高血圧診療の新たな可能性が議論されます。日本高血圧学会理事長で同総会の会長を務める苅尾 七臣(かりお かずおみ)先生(自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門 教授)に、高血圧診療の現状と学会の取り組み、総会に込めた思いについて伺いました。

「半分の半分」が示す日本の高血圧の課題

高血圧は日本で最も患者数が多い病気の1つです。全国には約4,300万人の患者さんがいると推定されますが、そのうち約45%は治療を受けていません。治療を受けている約55%の方も良好にコントロールできているのはそのうち約半分です。全体で見ると血圧を十分にコントロールできている人は約27%にすぎません。つまり患者さんの半数近くは治療を受けておらず、治療を受けている人の中でも良好に血圧が管理できている人はさらにその約半分となる「半分の半分」という状況です。これが現在の日本における高血圧領域の大きな課題といえます。

さらに血圧をより低く抑えるほうが予後の改善につながるというエビデンスが蓄積されており、 “高血圧管理・治療ガイドライン2025”では年齢によらず診察室血圧で130/80mmHg未満を目標とした管理が求められています。従来の140/90mmHg未満という基準でも達成できていた人は全体の約27%でしたから、130/80mmHg未満ではその割合はさらに低くなると考えられます。特に問題なのはご自身が高血圧であると気付いていない方の存在です。たとえば比較的若い40~50歳代で脳出血を起こした方を調べると80%以上に高血圧の背景があった一方、そのうち80%以上はそれまで血圧を測ったことがないか治療を受けていなかったのです。だからこそ、まずはご自身の血圧を「測る」ことが重要です。病気になって病院に来てからではなく、健康に生活している段階で高血圧を発見し、治療につなげていく必要があります。

血圧上がる「冬が来る前に」、社会全体で備える

日本高血圧学会では、日常生活の中で血圧を測定する機会そのものを増やそうとしています。その1つが「キオスク血圧」です。キオスク血圧とは公共施設や職場などに置かれた自動血圧計を用いて、医療従事者の手を借りずに血圧を自己測定できる環境を指します。日本循環器協会とも連携しながら、スポーツジムや薬局、ドラッグストア、公共スペースなどに血圧計を設置して、街の中で気軽に血圧を測れる環境を広げています。

さらに期待しているのが、腕時計のように身につけるウェアラブル血圧計です。診察室血圧や家庭血圧、さらにはキオスク血圧などとウェアラブル血圧計を組み合わせることで、日常生活のさまざまな場面での血圧を把握できるようにしていきたいと考えています。

また、血圧は季節によって変動し、一定でないことも注意が必要です。夏場と比べて冬場には平均で約8.6mmHg血圧が上昇し、脳卒中や心筋梗塞、心不全などの循環器疾患も6月と比べて1月には約1.6倍に増加します。そこで2026年は11月16~22日までを「早朝血圧測定週間」とし、「冬が来る前に」を合言葉に、朝の血圧測定を呼びかけるキャンペーンを行います。本格的に寒くなる12~1月を迎える前に、ご自身の血圧を知り、もし高ければ生活習慣や住環境などを見直していただきたいと思っています。2025年も「早朝高血圧徹底制圧宣言」としてキャンペーンを展開し、NHKや新聞などのメディアと連携して啓発を行いました。その結果、過去3年間の平均と比べて冬場の血圧上昇が約25%抑えられたというデータも得られています。こうした継続的な社会への働きかけも本学会の重要な役割だと考えています。

時間と空間をつなぐ次世代の高血圧診療

10月10日より開催される第48回日本高血圧学会総会のテーマは「新時代のネットワーク高血圧学―時空間をつなぐ次世代医療へ」としました。このテーマには、血圧を加齢や季節、曜日、1日の中での変動といった「時間」の変化として捉え、加えて生活習慣や気候、地域環境などの「空間」の情報も加味して、それらをデジタル技術やAIによって統合していくという意味が込められています。さまざまな情報をつなぐことで、一人ひとりのリスクを予測し、脳卒中や心筋梗塞などを未然に防ぐ個別最適化医療の実現を目指す考え方です。

初日には、このテーマを議論する国際シンポジウムを開催し、国際高血圧学会(ISH)の会長、前会長を含む歴代の会長など、世界の専門家が集まります。またアジア初となる「アジア高血圧共通ガイドライン」も発表する予定です(10月10日、Hypertens Res(日本高血圧学会機関誌:IF5)にて発表予定)。

2日目には、2026年3月に保険適用となった腎デナベーション(RDN)について大きく取り上げます。RDNとは、カテーテルを用いて腎動脈周囲の交感神経のはたらきを抑えることで血圧を下げる治療法です。実際に治療を開始した施設からデータを持ち寄り、どのような患者さんに効果があったか、あるいはどのようなケースで十分な効果が得られなかったかなど、成果を議論できればと思っています。

最終日には、一般の方を対象とした市民公開講座を開催します。冬場の血圧上昇への備えや家庭での正しい血圧測定法、気をつけたい生活習慣などについて専門医が分かりやすく解説します。血圧計やジュースが当たるお楽しみ抽選会も予定しています。事前申込は10月5日15時まで受け付けています(URL: https://www.congre.co.jp/48jsh2026/common/files/shimin.pdf)。多くの方のご参加をお待ちしております。

「Everything is United in Blood Pressure」――血圧から患者さんの人生を診る

今回の総会を通じて、若い医師の皆さんを含め、多くの医療関係者の方々に高血圧という領域の魅力を感じていただきたいと思います。カテーテル治療などによって目の前の患者さんの状態が劇的に改善する瞬間は循環器医療の大きな魅力です。しかし、私たちの使命はその「点」の治療だけではありません。患者さんが脳卒中や心筋梗塞を起こすまでには、何年、何十年という時間があります。治療を終えて退院した後も患者さんの人生は続きます。患者さんの人生という「時間軸」に寄り添い、重大なイベントを未然に防ぐことこそ重要です。

そこで今回の総会では「Everything is United in Blood Pressure(全てのものは血圧において統合されている)」というメッセージを掲げました。この言葉には、特定の病気や臓器だけを診るのではなく、血圧を軸に患者さんの全身を長期的に診ていくという思いを込めています。血圧は脳、心臓、腎臓をはじめ、全身の臓器と生命維持の根幹につながっているのです。まさしく、今回の総会のテーマであります、デジタル新時代の時空間高血圧ネットワーク高血圧学です。

10月10日の夜には参加者の皆さんが交流できる「ガラディナー」も開催します。宇都宮餃子をはじめ、地元の日本酒やワイン、ジャズの生演奏など栃木ならではのおもてなしを用意しています。学術的な成果を社会へ実装し、人と人、そして時間と空間をつなぐことで、これからの高血圧学を皆さんと一緒に考える場にしたいと思っています。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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