一般社団法人日本リウマチ学会と株式会社メディカルノートによる第13回の連携ウェビナーが2026年8月28日に開催されました。今回は東京女子医科大学 整形外科学分野 炎症性関節疾患外科部門の矢野紘一郎先生による「炎症は治まった…でも足は?-寛解時代のリウマチ足手術-」、新潟県立新発田病院 リウマチセンターの看護師 秦加代子さんによる「リウマチ患者が“幸せな足”と感じるのは、どんな足?」の2つの講演がありました。それぞれの内容をダイジェストでお送りします。
矢野先生:
現代の関節リウマチの診療は「寛解時代」と呼ばれています。当院で行ったコホート研究によれば、研究開始当初の2000年頃は臨床的寛解を得られていた患者さんは5%にも満たなかったのに対し、現在では半数以上が臨床的寛解に達し、低疾患活動性まで含めれば9割以上の患者さんで良好なコントロールが得られています。ここ20年ほどで関節リウマチの診療は大きく変化したのです。
ただ、私たち医師が「寛解ですね」とお伝えしている患者さんの足元を見てみると、関節リウマチの寛解基準を満たしていても、実際には2~4割程度の患者さんに滑膜炎が残存し、腫脹や圧痛のある関節が平均2~3か所残っているとの報告があります。全身の疾患活動性が改善しても、足には炎症が残っている患者さんが少なくないのです。
矢野先生:
典型的なリウマチ足にみられる変形は、外反母趾や内反小趾(小趾が内側に反ってしまう変形)に加え、足の趾(ゆび)が下に潜り込むことで第2趾から第4趾までのMTP関節*が脱臼してしまうケースです。脱臼したMTP関節の足底側(足の裏)にタコ(胼胝、べんち)が生じ、強い痛みや歩行障害の原因となります。これは、中足骨(足首から足の指の付け根までをつないでいる骨)の下にあって衝撃を吸収している脂肪組織が脱臼で引き上げられてしまい、骨頭(骨の先端部分)が直接皮膚と地面からの圧を受けることで起こります。また、脱臼したMTP関節に押される形でPIP関節**の背側(足の甲)には、靴が当たってタコができてしまいます。

提供:矢野紘一郎先生
足のタコが患者さんの歩行に与える影響は、研究でも裏付けられています。足の裏のタコの有無で患者さんを2群に分けて解析を行ったところ、関節破壊の程度を示すTSS(Total Sharp Score)は、タコあり群がタコなし群に比べて有意に高く足の関節破壊が進んでいました。また、機能障害を評価するHAQs(Health Assessment Questionnaires)の中でも歩行に関する項目で、タコあり群はタコなし群より有意に高く機能障害が進んでいることが示されました。つまり、足の裏のタコは単に皮膚や見た目の問題ではなく、患者さんの歩く力そのものに関わる重要な問題なのです。
これらに対する治療として、保存療法としてフットケアが広く行われています。皮膚科医や看護師がタコを削る処置のほか、足裏への圧を分散させるインソールや足底装具、ドーナツ状の除圧パッドを使用する方法があります。また、アキレス腱が硬いと歩行時の体重移動が上手くいかず、前足部に荷重が集中してタコができる一因になります。そのためアキレス腱のストレッチも予防として有用です。
*MTP関節:足の指の付け根の関節。
**PIP関節:足の指の第2関節。
矢野先生:
保存療法を行ってもなかなか改善しない場合は手術が選択されます。関節リウマチの前足部の手術は大きく「関節非温存手術」と「関節温存手術」の2つに分けられます。関節非温存手術では、中足骨を切除するほか、関節を固定したり人工関節に置換したりしてMTP関節の変形を直します。一方、関節温存手術では関節は残して中足骨を切ることで変形を直します。多数の研究でどちらの方法がよいか比較されていますが、温存手術のほうが非温存手術よりも優れているという報告が多くあります。当院で歩行時の足底圧を計測したデータでも、温存手術後では健常者に近い、かかとから足の外側、親指を経て抜けていく圧の流れが再現されましたが、非温存手術後は足趾にほとんど圧がかからず、足を踏み返す動作が難しい状態であることが示されています。


提供:矢野紘一郎先生
患者さんが足に求める機能として、痛みのない歩行、整容面(見た目)、靴の選びやすさ(変形の少なさ)などがあるでしょう。これらが障害されたときは、整形外科にご紹介いただくとよいと思います。その後、手術を検討するにあたっては、関節の適合性が重要になります。関節の適合性が保たれている段階であれば関節温存術を選択することができますが、関節の破壊や圧壊が進んでいると関節を残すことは難しくなります。ある程度早い段階でご紹介いただくことをおすすめしたいと思います。
秦さん:
私は看護師として、関節リウマチ患者さんのフットケアに携わっています。関節リウマチ患者さんにとって、足の痛みや変形は日常生活に大きな影響を与えます。2020年のリウマチ白書では、81.5%の患者さんが「靴で悩んでいる」と回答しています。しかし、私たち医療者が考える「医学的に正しい足(良い足)」と患者さんが望む「幸せな足(生活できる足)」には認識のギャップがあるかもしれません。
そこで当院では、足趾形成術を受けた患者さんの語りを分析し、フットケアに対する捉え方や変化のプロセスをカテゴリーとして抽出しました。「足を見せるのが恥ずかしくて、家族にも隠していたけれど、先生に診てもらって気が楽になった」「足の裏がツルツルして綺麗だねと言われたのが嬉しかった」といった語りから、足の問題が身体面だけでなく心理面や社会生活にも複雑に影響していることが分かりました。「幸せな足」とは、単に痛みがない足ではなく、人に見せられる足、安心できる足、そして未来を描ける足なのだと、患者さんの語りから教えていただきました。
秦さん:
当院では2015年から「フットケアプロジェクト」を開始し、入院と外来合わせて年間900件程度の処置を行っています。医師の診察・指示のもと、看護師がフットケアやセルフケア教育を担い、理学療法士や義肢装具士と連携してインソールや足底装具の作成・調整や靴の選定も支援しています。
処置に携わる看護師には院内教育を義務付けており、基礎研修で足病変と病態生理の理解、足部の観察・アセスメント、異常所見を早期に察知して医師に報告できる判断力を学びます。技術の習得には実技を重視したチェックリストによる評価を用いており、全項目合格をもって初めてフットケアに関われる仕組みとしています。入院時には足の観察を必ず行うことをルール化しているほか、外来では日常生活動作に関する問診票を用いた圧痛・腫脹関節のチェックや問診を通じて足の困りごとを把握しています。なお、糖尿病を合併している患者さんでは、神経障害や血流障害のリスクを考慮し、原則として内科医の許可を得てから対応しています。
処置としては、まず潤滑剤で皮膚を柔らかくしたのち、厚い角質にはコーンカッターを、ウオノメなど芯のある角質はニッパーで芯を切除します。最後にグラインダーにフレーザーを取り付けて表面を滑らかに整えます。処置後は電子カルテに処置内容や観察所見を記録し、処置前後の痛みの変化をVASスケールで可視化しています。
秦さん:
2016年1月から2021年12月までに当院でフットケアを実施したリウマチ患者304人・459足を対象に行った研究では、対象を2群に分けて分析しました。フットケア施行後1年以内に処置を終了した患者を非継続群(Non‑repeater:N群)、複数回処置を継続した患者を継続群(Repeater:R群)としました。
フットケア施行後に痛みが著しく軽減し、VASスケールで20mm以上の改善が見られた患者はN群で85.3%、R群で72.8%でした。特にR群では、処置前のVASが高く、改善幅も大きい傾向がありました。R群では、開張足(足の横アーチが崩れて足幅が広がった状態)や内反小趾の進行が見られ、MTP関節への負担が増して、タコの再形成を促進していると考えられました。X線検査では、M1-M5角度や踵骨傾斜角度が疼痛やタコ形成と関連していることも明らかになりました。また、タコによる痛みが評価に影響して、疾患活動性の評価と実際の足部の状態にズレが生じることも示されました。今回の研究から、X線検査と患者さんの語りを組み合わせた評価が、再発予防や来院間隔の調整、セルフケア支援の強化につながる可能性が示唆されたと考えています。
リウマチ患者さんの足部ケアは、痛みの軽減だけでなく、再発予防、QOL(生活の質)の向上、そして「自分の足で行きたい場所へ行ける」という希望を支えるケアです。その実現には、疾患の経過や心理的変化に寄り添う看護の力と、医師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士など多職種との連携が欠かせません。これからも一人ひとりの足と歩みに向き合い、チームで歩ける未来を描いていきたいと思っています。
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