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インタビュー

消化管内視鏡とはーーその種類とメリット

消化管内視鏡とはーーその種類とメリット
田中 信治 先生

JA尾道総合病院 病院長、広島大学 名誉教授

田中 信治 先生

この記事の最終更新は2017年11月30日です。

消化管とは、咽頭・食道・胃・小腸・大腸・肛門という6臓器の総称です。本記事では、内視鏡を用いたさまざまな種類の検査と、消化管内視鏡検査のメリットについて、広島大学病院の田中信治先生にお話を伺います。

消化管とは、咽頭・食道・胃・小腸・大腸・肛門という6臓器をあらわす総称です。

消化管の一覧 

素材提供:PIXTA

消化管にかかわる疾患は非常に幅広く、患者さんも多くいらっしゃいます。なかでも食道がん胃がん大腸がんについては、日本のがん死亡の上位を占める一方で、婦人科系のがん(乳がん子宮がんなど)に比べて、検診の受診率が圧倒的に低い現状があります。

内視鏡は通常、内視鏡内科で使用されますが、まずは「内視鏡内科」と「内視鏡外科」の違いについてご説明します。内視鏡内科では、口や肛門などから内視鏡を挿入し、いずれかの臓器を検査または治療します。一方、内視鏡外科では、体に小さな穴を開け、腹腔鏡や胸腔鏡を用いて外科的手術を行います。つまり、内視鏡内科は体の内側から臓器にアプローチする内科的手技、内視鏡外科は体の外側からアプローチする外科的手技(外科手術)という点に大きな違いがあります。

消化管内視鏡は、口や肛門などから内視鏡を挿入しいずれかの臓器を検査するものです。これまで消化管内視鏡はおもに、病変の診断やがんのスクリーニング検査(症状がない状態でがんの可能性を調べる)に用いられてきました。しかし近年は、がんの摘除(病変・周辺組織を切除)、胆道系結石(胆嚢・胆管にできる結石)の除去、出血箇所の止血術、狭窄(きょうさく)拡張術、異物除去、胃ろう造設術、食道胃静脈瘤の治療など、さまざまな用途が可能になりました。なかでも早期にがんを発見し、外科手術ではなく内視鏡で摘除できることは、非常に有益です。

内視鏡検査とは、内視鏡を体内に挿入し直接観察して疾患を診断するとともに病態を把握する検査です。内視鏡検査には、通常内視鏡検査のほかに、経鼻内視鏡検査、色素内視鏡検査、画像強調内視鏡検査、拡大内視鏡検査、超音波内視鏡検査など、さまざまな種類があります。※臓器・疾患ごとの通常内視鏡の活用については後述します。

経鼻内視鏡検査は、文字通り鼻から内視鏡を入れて行う検査です。喉からの挿入と異なり嘔吐反射がないことがメリットです。一方、デメリットは、通常内視鏡に比べて細いため描出できる画像の画質がやや低いことと、送気するパワーや粘液や液体を吸引する力が弱いことです。

上記の理由から、経鼻内視鏡はおもに健診などにおける病変のスクリーニング検査に用いられます。

経鼻内視鏡
経鼻内視鏡検査 画像提供:田中信治先生

色素内視鏡検査とは、患部に色素をまき病変の識別を容易にする方法です。色素内視鏡検査には、色素液の陥凹面へのたまり現象を応用して凹凸を強調させるコントラスト法 (インジゴカルミンなど) や、色素と粘膜の分泌物や細胞成分との特徴的な反応を利用する反応法 (ヨード、酢酸、クリスタルバイオレットなど) があります。食道がんの診断ではヨードが、胃がん十二指腸がんの診断ではインジゴカルミンがよく使われます。

色素内視鏡検査(食道表在癌のヨード染色像) 画像提供:田中信治先生
色素内視鏡検査(食道表在癌のヨード染色像) 画像提供:田中信治先生

 

色素内視鏡検査(早期胃がんのインジゴカルミン散布像) 画像提供:田中信治先生
色素内視鏡検査(早期胃がんのインジゴカルミン散布像) 画像提供:田中信治先生

超音波内視鏡検査は超音波を使用して病変の垂直断面像を直接描き出す検査法です。超音波によって、通常の内視鏡による表面からの観察に加えて、深部の貫壁構造を観察することができます。

超音波内視鏡検査は、消化管がんの深達度とリンパ節転移の有無、悪性リンパ腫やGIST(消化管間質腫瘍)などの粘膜下腫瘍などの診断が可能であり、治療方針を決定するうえで非常に有用です。超音波内視鏡検査は、内視鏡先端に超音波を発するプローブ(探針)が直接納められた超音波内視鏡専用機と、通常の内視鏡の鉗子孔よりプローブを挿入する高周波細径超音波プローブで検査を行います。細径超音波プローブの周波数は、12MHz〜20MHzまで複数あり、検査の目的や病変の肉眼形態などにより選択します。

超音波内視鏡検査の画像 画像提供:田中信治先生
超音波内視鏡検査の画像 画像提供:田中信治先生

手順

経口内視鏡と同様に、まずは内視鏡を挿入後に病変を確認します。その後、鉗子口より水を注入することで病変を浸水させたうえで(空気を含むと超音波が伝わらないため)、超音波プローブを病変に水平にあてて画像を描出し診断を行います。通常の内視鏡検査の結果をみたあと、詳細な病変の状態をみるために関心領域を絞って超音波内視鏡検査を行うケースもあります。

所要時間と費用

通常、超音波内視鏡検査の所要時間は10〜15分ほどです。費用は、超音波内視鏡検査のみで3,000円が加算されます。なお、選択する内視鏡検査や使用する薬剤により合計金額が変わります。

消化管内視鏡はバリウム造影やCTコログラフィー(大腸CT検査)などに比べて高画質、かつ、カラーでの画像診断が可能であるため、微小な病変や平坦な病変を早期に発見できます。初期の上部消化管がんは平べったくしこりがないことからPET-CT(一度に全身のがんを調べる画像検査)には写りにくいため、早期発見を困難にしていますが、内視鏡は平坦ながんも観察可能であるため、消化管がんの早期発見に大きく役立っています。

消化管内視鏡による検査は

  1. 皮膚に創(きず)をつけない
  2. 放射線を使わない(被爆しない)
  3. ケースによっては診断と同時に治療できる

といった点で、患者さんの身体的・精神的な負担が少ないです。また以前よりも内視鏡が細くなり、鎮静薬・麻酔が改良されたことで、喉の嘔吐反射が出やすい方でも検査を容易に受けられるようになりました。

内視鏡検査を受けるべき理想的な頻度は、人によって異なります。なぜなら病変の発生は、各人の持つリスクファクターに影響されるからです。遺伝的素因も考慮すべき重要な事項です。具体的なリスク因子は、たとえば食道がんなら、飲酒・喫煙・高齢者・男性などの要素がリスクを高めます。同様に、大腸がんなら腫瘍やポリープ、がんが過去にできたか否か、そして家族歴、炎症性腸疾患罹患の有無、胃がんならピロリ菌を保有しているか否かが、各臓器に病変が発生するリスクに影響を与えます。

上記のような理由から、私たちは通常、各人が持つさまざまな要素を考慮し、内視鏡検査を受けるための理想的な頻度(間隔)を推奨しています。

広島大学病院の内視鏡診療科では

  1. 消化管内視鏡
  2. 肝胆膵内視鏡
  3. 気管支鏡診療

のすべてを行っています。同科は、7部屋の消化管専用検査室、2部屋の透視内視鏡室(うち1つは陰圧ルーム)を備え、モニタリングルームですべての検査室の内視鏡画像と室内の状況を把握しており全検査室の中央管理システムを徹底しています。

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