
がんの早期発見の重要性について、国が推奨するがん検診のメリットだけでなく、過剰診断などのデメリットも含めて解説します。
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国立がん研究センターの2014~2015年の統計データでは、がんが早期(ステージI)に発見された場合の5年後の生存率が高くなっています。
国立がん研究センターのデータ(2021年)によれば、日本では生涯のうちにがんと診断される確率は、男性63.3%、女性50.8%と推計されており、男女共に約2人に1人が経験する、誰にとっても身近な病気といえます。
一方で、がんと診断された場合に、発見されたときの進行度(ステージ)がその後の経過に影響します。
がんの治療成績を示す指標の1つに、5年生存率(ネット・サバイバル)があります。これは、がんと診断された人のうち、がんのみが死因となる場合を仮定して、5年後に生存している割合を示す数値です。
多くのがんでは、がんが最初に発生した臓器にとどまっている早期の段階(ステージIなど)で発見された場合、より体への負担が少ない治療で効果が得られる可能性が高いといわれています。しかし、がんが周囲のリンパ節やほかの臓器に転移した進行した段階(ステージIVなど)になると、全身のがんに対する治療が難しい場合があります。

このように、がんは早期に発見し治療を開始することが、良好な治療成績につながる極めて重要な要因であると報告されています。
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がんの早期発見のため、死亡率を減少させる効果(死亡率減少効果)が科学的に証明されている5つのがん(胃・大腸・肺・乳・子宮頸)に対する検診が推奨されています。
現在、日本で市区町村などが主体となって実施しているがん検診は、主に“対策型検診”と呼ばれるものです。これは、個人の任意で受ける人間ドックとは異なり、対象となるがんを早期発見して治療することにより、集団全体の死亡率を減少させることを目的としています。
そのため、対策型検診として推奨される検査方法は、死亡率減少効果が科学的に証明されているものに限られます。現在、国が推奨しているのは以下の5つのがん検診です。

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がん検診の最大のメリットは、自覚症状のない段階でがんを発見し、適切な治療につなげることによる死亡率減少効果です。
がん検診の有効性を評価するうえで最も重要な尺度は、“その検診を受けることで、対象となるがんによる死亡率が確実に減少するかどうか”という死亡率減少効果です。たとえば、毎年便潜血検査を行った場合、大腸がんによる死亡率を60%減少させると報告されています。
このように、科学的に有効性が確認された検診を定期的に受診することは、がんから命を守るうえで重要と考えられています。
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検診には、がんではないのに要精密検査となる“偽陽性”、治療不要のがんを見つける“過剰診断”、がんを見逃す“偽陰性”、検査に伴う“偶発症”というデメリットも存在します。
実際には、がんでないにもかかわらず、検診の判定が“陽性(要精密検査)”となることを偽陽性と呼びます。
たとえば、偽陽性の割合は乳がん検診において約10%とされています。これは、検診を受けた方のうち、一定の割合でがんでないにもかかわらず“がんの疑い”という判定を受けることを示しています。精密検査の結果が確定するまでの間、不安を抱える可能性があります。
過剰診断とは、検診によって、治療しなくても生涯にわたって健康に影響を及ぼさなかった可能性のある、進行の非常に遅いがん(おとなしいがん)を発見することです。
現在、発見されたがんが治療の必要なタイプか、おとなしいタイプかを確実に見分けることは困難な場合があります。そのため、過剰診断によって発見されたがんに対しても、副作用を伴う手術や放射線治療などが行われることがあります。
非常に小さながんや見つけにくいがんを見逃すことを、偽陰性と呼びます。しかし、定期的にがん検診を受けることで、がんを発見できる可能性が高くなります。
検診や精密検査中に生じる合併症を偶発症と呼びます。たとえば、X線検査やマンモグラフィでは放射線被ばくが伴います。また、内視鏡検査など体内に器具を挿入する検査では、ごくまれですが、出血や穿孔(消化管などに穴が開くこと)を生じることがあります。
現在推奨されている5つのがん検診は、これらのデメリットをメリット(死亡率減少効果)が上回るように対象年齢や頻度が決められています。
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近年、血液や尿で微量のがんのサインを捉えるリキッドバイオプシーや、AIによる画像診断支援など、より高精度で負担の少ない新しい技術の研究が進められています。
リキッドバイオプシーは、血液や尿などの体液を用いて、がんの診断や治療方針の決定に役立つ情報を得る技術の総称です。現在は治療が終了した患者さんに用いられることがあります。
近年では、血液中のがん細胞由来の遺伝子などを定期的に確認することで、がん検診の対象とならないがんの早期発見の可能性が期待されています。しかし、実用化には偽陽性・偽陰性の問題など、解決すべき課題も残されています。
AI(人工知能)を画像診断に活用する技術も研究が進められています。たとえば、大腸内視鏡検査の際に、医師が見逃す可能性のある微小なポリープなどをAIが検出し、モニター上で指摘する診断支援システムが2024年に保険適用となりました。また、早期胃がんの内視鏡検査でも、医師と同等の診断を行うことのできるAIの研究が行われています。
これらの技術は医師の診断を代替するものではなく、あくまで診断の精度を高めるための支援ツールですが、診断の質の標準化や向上に貢献することが期待されています。
A.がん検診の最も重要な目的は、がんを自覚症状のない段階で発見し、治療を開始することです。多くのがんは、症状が現れた時点ではすでに進行している可能性があります。そのため、症状がない健康なうちから定期的に検診を受けることが推奨されています。なお、何らかの症状がある場合は検診を待たずに医師の診察を受けましょう。
A.がんが存在していても発見が遅れ、進行した状態で見つかる可能性が高まります。その場合、治療の選択肢が限られたり、体への負担が大きい治療が必要になったり、治療成績が不良となったりするリスクが考えられます。
A.市区町村などが実施するがん検診(対策型検診)は、集団全体の死亡率減少を目的とし、科学的根拠のある検査法に限定されています。一方、人間ドックは、個人が任意で費用を負担して受けるもの(任意型検診)です。より多角的な検査が含まれることが多いですが、全ての検査で科学的に有効性が証明されているわけではありません。
本記事では、がんの早期発見について、その重要性を裏付ける生存率データから、現在推奨されているがん検診のメリット、そして偽陽性や過剰診断といったデメリットまで解説しました。
がん検診は、がんで死亡するリスクを減らす一方で、デメリットを伴う可能性もあります。どちらも適切に理解したうえで、ご自身の年齢や健康状態、価値観などを考慮し、医師と相談しながらがんの早期発見を目指していきましょう。
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